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日本の科学研究の危機[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.53

佐野 統 (京都岡本記念病院病院長)

登録日: 2020-01-04

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日本の科学研究がここ10年で失速しているとの指摘がある。元三重大学学長の豊田長康先生の報告では、2002年頃から日本の論文国際競争力が低下し、2013年には人口当たりの論文数が世界35位、先進国では最低であるとのことである。

その要因の第一は、国からの予算削減だ。文部科学省は世界トップ拠点プログラムなどで、トップ中のトップ機関には多額の研究費を配分しているが、先端をとがらせただけでは不十分な気がする。一定レベルの雑誌に掲載されるような論文を書くには相応の研究費が必要であり、今の公的研究費の総額と配分法から考えると、そのレベルから振り落とされた研究室が地方の国立大学を中心に相当数あると考えられる。

研究失速のもうひとつの要因が90年代のポスドク1万人支援計画だ。同計画は民間への優秀な人材提供が目的であったが、その多くがアカデミアに残留したため、大学院博士課程への進学者が2003年をピークに減少した。大学の常勤ポストに就く教員の高齢化や、日本の若手研究者が研究室主宰者(PI)になる意欲が高くないことも問題として挙げられている。

今後、日本全体の研究レベルを高めるには、研究費の増額がもちろん必要であるが、同時に各大学で、①適正な競争原理の導入、②積極的な任期制の導入、③研究者の流動性の向上、④使命を終えた研究室の統廃合、⑤高額研究機器の効率的な運用、などの問題点をクリアしなければならない。

医学部においては臨床研修必修化により、基礎医学に進む人材が激減し、日本発の臨床研究の実力が低下し、医学界の大きなマイナス要因になることは必至だ。大学での基礎研究で学ぶことは、実験技術だけではなく、研究の意義、研究に対する姿勢に加え、世界最先端の科学としての医学を肌で感じさせる利点があった。その訓練を受けていない人間が、日本の臨床研究の担い手になるのである。あっという間に日本の臨床研究能力は低下するであろう。

改革案としては、大学病院の完全なリサーチホスピタル化や、大学院のシステムの抜本的な見直しが必要であると考える。

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