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■NEWS オンライン診療の要件緩和を巡り、再び議論が紛糾─中医協総会

No.4987 (2019年11月23日発行) P.66

登録日: 2019-11-13

最終更新日: 2019-11-13

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中央社会保険医療協議会総会は118日、「オンライン診療料」などの要件緩和について審議したが、支払側と診療側の意見が折り合うことはなく、議論は再び紛糾した。支払側は現役世代の生活習慣病患者の治療と仕事の両立支援へのオンライン診療の活用を改めて求めたが、診療側は利便性を理由に安易に要件緩和をするべきではないと反発。2020年度改定は、通院困難な難病患者に難病医療拠点病院が実施する場合への対応にとどめ、それ以上の要件緩和は、医学的エビデンスの確立を待つべきだと主張した。

現行ルールでは、「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」の算定対象を、「地域包括診療料」や「生活習慣病管理料」などの管理料を算定する初診以外の患者と規定している。ただし、オンライン診療の実施や報酬の算定が認められるのは、最初の管理料の算定より6カ月が経ってからで、それまでは対面診療が必須であるほか、オンライン診療を開始後も、3カ月ごとの対面診療が求められる。

支払側はこの日の総会で、現役世代の生活習慣病患者の治療と仕事の両立と重症化予防のためには、オンライン診療料などの要件緩和が必要と改めて主張。吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「初診後にオンラインで定期的な診療ができる環境づくりと要件の見直しについてしっかり議論を深めていく必要がある」との認識を示した。

厚生労働省が総会で生活習慣病患者が初診までに要する時間についてデータを提示。健診等で指摘を受けた患者または1年以内に通院歴のある全国2065歳の男女1545人を対象に遠隔医療学会分科会が実施した調査によると、生活習慣病患者206人が症状の自覚から初診までに要した時間は1週間以上が約7割を占め、半年以上の患者も約3割いたという。その理由としては「医療機関にかかるほどでもないと思ったから」(39.4%)、「受診する時間が作れなかったから」(34.5%)との回答が多い。無理なく通院できる頻度では、23カ月に1回程度との回答が約3割に上った。支払側はこれらのデータも根拠に、提案の妥当性を強調した。

■20年度改定は通院困難な難病患者への対応に限定を─松本委員

診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、20年度改定は、医療へのアクセスが難しい離島や医療資源の少ない地域などへの対応にとどめるべきだと反論。具体策として、難病医療拠点病院で通院困難な難病患者にオンライン診療を行う場合に限り、要件緩和を検討することを提案した。

今村聡委員(日本医師会副会長)も、「オンライン診療はごく一部の医療機関が取り入れたばかりで、診療報酬全体での拡大などの前にそもそも環境がない。あまり拙速に要件拡大の議論をするべきではない」と牽制したが、これに吉森委員が、「環境が整うまで進めないのか。環境をつくって推進していく中で、条件の妥当性を検討してもいいのではないか」と反論するなど、両者が歩み寄ることはなかった。

■診療側が「医師事務作業補助体制加算」の要件緩和を要望

総会ではこのほか、医療従事者の働き方改革についても議論した。厚労省は検討項目として、▶「医師事務作業補助体制加算」の評価のあり方や算定要件の見直し、▶病院勤務医の負担を軽減するため、「総合入院体制加算」の「医療従事者の負担軽減及び処遇改善に資する計画」の選択肢に、看護職員との業務分担、看護師特定行為研修修了者の配置、院内助産などの開設などを追加、▶医師の常勤配置を要件としているが常勤換算を認めていない診療報酬項目について、常勤医師の役割や必要性を踏まえて要件を見直し、▶「外来化学療法加算」の看護師の常勤要件の見直し─などを提示。

診療側はこのうち「医師事務作業補助体制加算」について、中小病院での算定が可能になるように、「年間の緊急入院患者数800名以上」の要件見直しや、算定対象入院料の拡大などを求めた。

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