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膿胸[私の治療]

No.4986 (2019年11月16日発行) P.51

比嘉 太 (国立病院機構沖縄病院呼吸器内科統括診療部長)

登録日: 2019-11-14

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  • 膿胸とは,胸腔内に膿性の胸水が貯留した病態をいう。病態や治療方針,予後の違いから,急性膿胸と慢性膿胸とに分類される。適切な治療がなされなかった急性膿胸は慢性化・難治化する。肺炎随伴胸水でも,胸水性状でpH低下,糖濃度低下,一般細菌塗抹陽性あるいは培養陽性,LDHの異常高値を示す場合には,膿胸に準じて治療を行う。

    ▶診断のポイント

    急性膿胸の発症時には,感染徴候(発熱,全身倦怠,悪寒戦慄など),咳,呼吸困難,患側の胸痛や背部痛などがみられる。慢性膿胸では症状が軽度の場合もあるが,病変の拡大に伴って,労作時呼吸困難が徐々に増悪する。合併症の発症により,発熱や胸痛の増悪,呼吸器症状の増悪などが認められる。診察では患側胸部の呼吸音減弱が認められる。病変部位の打診にて濁音が確認される。

    急性膿胸における血液検査所見では,白血球増多あるいは減少,核左方移動,CRP高値,赤沈亢進などの炎症所見が認められる。慢性膿胸では炎症反応が軽度の場合も多い。

    胸腔穿刺で得られる胸水の性状として,肉眼的に膿性や悪臭を認めることが多い。胸水検査では,滲出性胸水,pH低下,糖減少,多核白血球優位,などがみられる。

    胸水の微生物学的検査は必須であり,胸水から検出された微生物が原因菌と判断される。一般細菌培養とともに,嫌気培養および抗酸菌検査も併せて実施する。

    胸部画像検査では,患側に膿性胸水の貯留を認める。通常の胸水よりもCT値が高いことが多い。種々の厚さの被膜形成や隔壁形成がみられる場合がある。

    慢性膿胸は,急性膿胸や結核性胸膜炎から移行した病態である。膿胸は厚い被膜に覆われており,より難治な病態である。慢性膿胸の合併症として,Epstein-Barr(EB)ウイルスの関与するリンパ腫や進行性の血腫がみられることがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    抗菌薬療法と胸腔ドレナージが治療の基本である。

    膿胸は細菌性肺炎が胸腔内に波及して発症する場合が多い。その場合には,肺炎球菌,黄色ブドウ球菌が多いとされ,Streptococcus constellatus groupなどの口腔内連鎖球菌や嫌気性菌の関与する場合もみられる。肺炎桿菌は易感染性患者にみられる。

    初期治療には上記の病原微生物に抗菌力を有するβラクタム系薬を用いる。胸水から分離された原因菌の菌種および薬剤感受性に応じて,抗菌薬を適宜変更する。

    胸水検査で低pH(7.2未満),糖濃度低下(40mg/dL未満),グラム染色陽性あるいは培養陽性例などでは予後不良のリスクが示されており,胸腔ドレナージを速やかに開始する。難治が予想される症例では,早期に外科的治療についてコンサルトする。

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