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肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)[私の治療]

No.4981 (2019年10月12日発行) P.44

田口善夫 (天理よろづ相談所病院「憩の家」呼吸器内科特定嘱託部長)

登録日: 2019-10-15

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  • CD1a/Langerinのランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)細胞の浸潤によって生じるLCHの中の一病態であり,90~100%が現喫煙ないし過去に喫煙歴を持ち,喫煙関連疾患のひとつとして認識されている。また,肺の囊胞性肺疾患の重要な病態である。
    LCHでは約半分以上で発がん遺伝子であるBRAF-V600Eの発現が確認されており,腫瘍性病態と認識されている。また,全身性LCHでは限局性LCHよりその発現率は高く,現在2016年の「Histiocyte Society Classification」では,炎症性骨髄性腫瘍として分類されている。

    ▶診断のポイント

    通常,成人発症例が多く,性差はない。臨床上肺ランゲルハンス細胞組織球症(pulmonary Langerhans cell histiocytosis:PLCH)は,①2/3では咳嗽や労作時呼吸困難などの呼吸器症状,10~20%では倦怠感,発熱,寝汗,体重減少などの一般症状で発症し,②15~20%では自然気胸を生じ,両側性かつ再発性であり,呼吸困難や胸痛を自覚する,③無症状患者の10~25%で胸部X線写真上で病変を指摘できる。

    血痰は稀であり,血痰を生じた場合には,気管支炎,肺癌,アスペルギルス症合併などを疑う。

    PLCHは喫煙歴があり,高分解能(high resolution:HR)CT上で多発の結節影と壁の肥厚した囊胞形成があれば,本疾患を疑う根拠となる。確定診断は病理学的に確認することが一般的である。経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)でも特異的病変が確認できれば診断可能だが,通常は外科的肺生検での診断が基本ではある。生検部位の基本は,結節性病変が適切で,粗な肉芽腫内にCD1a/CD207細胞の集積を確認することが重要であるそれらの病変は,末梢の細気管支壁に認められることが一般的である。初期病変では多くのリンパ球やマクロファージ,好酸球などの細胞浸潤が認められる。進行した病変では囊胞壁でのCD1a細胞は減少して瘢痕線維化病変のみを認めるが,この場合には特徴的とされるstellate scar(星状瘢痕)が病理学的に呈する。

    成人のPLCHは基本限局型であるが,他病変合併では骨,下垂体,非常に稀には皮膚などがある。肺限局型の確認は重要であり,PET検査を行うことが望まれる。また,胸部聴診上でcracklesは稀であり,ばち指はさらに稀である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    成人症例のPLCHではほとんどの場合には限局型である。また,各症例の自然経過は個々の症例によって様々であり,自然軽快する症例も少なくない。したがって,重要なことは,診断時の全身評価とその後の詳細な経過観察である。

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