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EBM〈実践〉─ベイズの定理の活用[プライマリ・ケアの理論と実践(33)]

No.4980 (2019年10月05日発行) P.8

宮﨑 景 (高茶屋診療所所長)

登録日: 2019-10-03

最終更新日: 2019-10-02

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SUMMARY
想定する疾患と場面に応じた検査閾値と治療閾値を設定しつつ,ベイズの定理を活用することで,検査を適切に選択することができる。

KEYWORD
ベイズの定理
事前オッズ×尤度比=事後オッズ
検査を含めた診断情報の感度と特異度から尤度比が算出される。ベイズの定理では尤度比を用いて事前確率から事後確率を計算することができる。


宮﨑 景(高茶屋診療所所長)

PROFILE
岐阜市出身,1997年名古屋大学医学部卒。内科,循環器内科研修後,名古屋大学総合診療部にて研鑽,ミシガン大学家庭医レジデンシーを経て現職。医師2年目でEBMと出会い,日常診療における臨床推論の教育を楽しんでいる。

POLICY・座右の銘
First, do no harm


症 例
あなたは中規模都市の診療所で働いている医師である。1月某日,巷ではインフルエンザが流行しており,この1週間は上気道症状と発熱で訪れる患者の半分強がインフルエンザという状況である。
35歳,既往歴のない独居の事務系サラリーマンAさん。インフルエンザと思しき人との接触は不明である。Aさん自身は,一昨日からの咽頭痛,鼻水に加え,昨夜より38.6℃の発熱が出現し,上司から「インフルエンザの検査を受けるよう」指示を受けて受診した。1日でも早く熱を下げられるなら,治療薬を使いたいと希望している。
詳しい病歴と身体診察をとったところで,Aさんは診療所を訪れている上気道症状と発熱の患者の中で,インフルエンザである確率が平均ぐらいの60%程度と見積もった。インフルエンザの迅速抗原検出キットを用いた検査を行うべきであろうか?

1 EBMの5つのステップ

EBMを実践する際に,日常診療の中から生まれた疑問に対して,以下の5つのステップを踏む。

step1:疑問(問題)の定式化
step2:情報収集
step3:情報の批判的吟味
step4:情報の患者への適用
step5:step1~step4のフィードバック

紙面の都合上,step1~3のプロセスを踏んで得たインフルエンザの迅速検査の感度,特異度は62%,98%(陽性尤度比31,陰性尤度比0.39)として1),本稿ではstep4にフォーカスを当てて論じたい。

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