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ジストニア[私の治療]

No.4978 (2019年09月21日発行) P.41

坂本 崇 (国立精神・神経医療研究センター病院脳神経内科診療部第三脳神経内科医長)

登録日: 2019-09-19

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  • ジストニアは中枢由来の筋緊張亢進による異常姿勢・異常運動と定義される。原因により特発性・続発性,罹患部位により局所性・分節性・全身性等に分類される。臨床の現場で遭遇するものは特発性局所性ジストニアが多い。ジストニアには次項のような特徴的な所見があり,診断に有用である。局所性ジストニアの治療ではボツリヌス治療が推奨される。内服治療は補助的に用いられる。症状が複雑な場合には外科治療を考慮する。

    ▶診断のポイント

    古典的には筋緊張異常を筋電図で証明することになるが,症状によっては評価が難しいことがある(検出された筋放電を原因とみるか,その是正とみるかは臨床症状との相関で判断しなければならない)。また,各種画像検査・髄液検査等は続発性ジストニアの除外診断としては有用であるが,特発性を中心として臨床の場で遭遇するジストニアでは異常が認められないことが多い。すなわち,現時点でジストニアに特異的なマーカーは発見されておらず,特徴的な臨床症状を診察で把握することが診断への重要な一歩となる。患者自身はそれと気づいていないことも多く,問診の重要なポイントである。

    感覚トリック:ちょっとした感覚入力を加える操作でジストニアの症状が著しく改善する。
    動作特異性:一定の筋緊張が特定の動作によってのみジストニアの症状を呈する(その筋を使用するほかの動作では起こらない)。
    常同性:ジストニアの症状は一定であり,日によって変わることはない。

    全身性の場合は遺伝性ジストニアとして遺伝子異常の検索が有用である。また,ジストニア以外の症状がある場合には代謝異常等を考えて検査する必要がある。
    抗精神病薬内服の既往は遅発性診断のカギである(これもあえて患者に聞かないと答えない場合もある)。また,ジスキネジアとの鑑別は治療方針の策定に必須である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    罹患筋の多寡によって治療戦略を組み立てる。原因によらず,局所性で罹患筋が比較的限局されている場合には,ボツリヌス治療が第一選択である。逆に罹患筋が多数の場合,また,ボツリヌス注射による筋力低下の影響が懸念される場合には,内服治療や外科治療が考慮される。

    ほかにも,症状が軽微で,ボツリヌス注射のメリットよりもデメリットが優位となりうると考えられれば,内服治療を優先させるべきであろう。
    動作特異性の強い職業性ジストニアの場合,症状の程度によらず,筋力低下の問題が通常のジストニア以上に大きく影響する可能性がある。昨今の脳外科治療の進歩により,視床等の凝固術によって劇的な改善が望める場合も少なくないので,早期に外科治療を考慮することを躊躇すべきではない。

    最近では異常運動・異常姿勢を呈さずに「こわばり感」「つっぱり」「違和感」などを「ジストニア」と自覚する患者も増えている。また,「痛み」が前景に立つ患者もいるが,あくまでもジストニアの本義は姿勢の異常であり不随意運動であるので,それに不随意する症状でなければジストニアとしてのボツリヌス治療は慎重に行うべきである(むしろ対症的な内服治療が奏効することも少なくない)。

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