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WEB問診による効率化で医療者が誇りを持って働ける環境を整えたい[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(8)]

No.4976 (2019年09月07日発行) P.14

登録日: 2019-09-06

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医療機関における人材確保が困難な状況が続く中で質の高い医療を継続して提供するために、スタッフが健康で安心して働くことのできる環境整備がますます重要になっている。連載第8回は、ICTの活用や他業界を参考にした経営手法の導入などでスタッフの満足度を重視した運営を実践する新規開業クリニックを紹介。スタッフの満足度向上が経営の安定化につながる好循環モデルを実現するためのクリニック運営について考える。

医療現場の労働環境を巡っては、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」が今年3月に取りまとめた報告書で「わが国の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられており危機的な状況」と指摘。環境改善が喫緊の課題となっている。医師だけにとどまらず、医療ニーズの多様化や地域連携、診療報酬の複雑化による事務作業の増加などの影響もあり、看護師や医療事務を含めた医療従事者全体の労働環境は過酷で、待ったなしの状況にある。

こうした課題の解決にはスタッフ数を増やすことが最も近道かつ重要とされているが、スタッフ数を抑えつつクリニックの経営努力で克服する取り組みを実践しているのが、東京・錦糸町に今年3月に開業した「錦糸町内科ハートクリニック」の福井悠院長だ。

スタッフの満足度向上が医療の質を高める

福井さんはクリニック運営において、サービス業の分野で数多く取り入れられている「サービス・プロフィット・チェーン」という概念を導入している。

サービス・プロフィット・チェーンは、従業員の満足度が上がればサービスの質が高まり、顧客の満足度も向上、結果的に企業の利益につながるという因果関係を示すフレームワーク。福井さんは医療をサービス業と捉え、スタッフの満足度を上げるための職場環境の整備をクリニック運営の最重要課題と考えている。

「私が目指しているのはスタッフに『病に苦しむ人のために行動する誇りと喜び』を感じてもらうことです。具体的な取り組みとして、クリニックの成長に合わせ、報酬を含む福利厚生を充実させるシステムなどを採用しています。医療者が誇りを持って働くことで、患者さんが受ける医療サービスの価値を最大化し、最終的にはクリニックの経営が安定していくという好循環モデルを構築していきたいと考えています」

ワンクリックで電カルに問診情報を転記

同院ではスタッフがコアな業務に集中できる環境を整備するため、予約・順番待ちシステムやクラウド型電子カルテを導入。今後は交通系電子マネーの会計にも対応予定で、受付から会計までの流れを省力化、患者の利便性にも配慮している。

医師が患者と向き合い、カルテ入力はスタッフが代行するシステムを採用する同院において福井さんが「ほかに替えがきかないシステム」と特に有用性を強調するのが、(株)フリクシーが提供、(株)インディペンデントインキュベータが販売する「メルプWEB問診」(https://web-monshin.melp.life/)だ。

メルプWEB問診は、フリクシー代表で内科医の吉永和貴さんが開発したWEB問診システム。最大の特徴は、問診結果をワンクリックで電子カルテに転記できるところだ(図1)。通常、紙の問診票をスキャンして電子カルテに取り込み、転記し、問診票をシュレッダーにかけて破棄するという一連の流れには約100秒かかる。メルプWEB問診では、患者が送信ボタンを押すだけなので全体で3秒程度に短縮でき、スタッフが入力する必要はない。メルプWEB問診を導入した理由について福井さんはこう語る。

「患者さんが医療機関を受診するときに最も不満に感じるのは待ち時間の長さです。待ち時間の短縮には2つの方法があり、1つは時間自体を短縮すること、もう1つは質的に改善することです。WEB問診は簡単な操作でどんどん進んでいくゲーム性があり、回答している時間はあまり苦になりません。現在WEB問診はAIを活用した診断能力のあるタイプが増えてきていますが、私はWEB問診に診断能力を求めていません。メルプWEB問診はあえてローテクを選択し、問診に機能を絞っているため使い勝手がよく、スタッフが入力する手間を省くことで患者さんの待ち時間を短縮できます。私が求めていたシンプルなソリューションだったことが決め手になりました」

問診票のカスタマイズにも柔軟に対応

メルプWEB問診は各科の雛型が用意されているが、カスタマイズが容易で同院も独自の問診票を作成している(図2)。同院では、記入開始時に「約3分」と所要時間を示し、患者の精神的負担を軽減する。症状によっては必要な検査の種類と費用が表示され、検査を希望した場合には優先的に検査が受けられるようなオペレーションを採用している。

このほか患者のニーズを把握するため、「なるべく早く診察を終えたい」「不安を感じており、しっかり相談したい」という選択肢を設定。

「例えば睡眠剤がほしいというようなサービスニーズとがんなどの懸念があるプロフェッショナルニーズを間違えて対応してしまうと患者さんの不満が大きくなるので、事前にヒアリングしています。メルプWEB問診には集計機能があり、分析してみると、プロフェッショナルニーズで来院している患者さんが多い傾向にあることが分かりました」(福井さん)

経営知とテクノロジーの活用を広めたい

福井さんが今後目指すのは、同院の取り組みを全国に広げていくことだ。「全国の医療者が誇りを持って働くようになれば国民全体が幸せになると思います。当院だけで結果を出しても広がりは期待できません。クリニックチェーンとして規模を拡大し各地で競争を誘発していくつもりですが、そのためには経営知とテクノロジーを活用したクリニック運営モデルを構築する必要があります。スタッフと患者双方にメリットのあるメルプWEB問診は、私が目指すクリニック運営に不可欠な基幹ツールになると考えています」

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