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紙ベースの診療情報の開示はコピー交付でよいか?

No.4976 (2019年09月07日発行) P.56

中川 肇 (富山大学附属病院医療情報部教授)

登録日: 2019-09-04

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紙カルテから電子カルテに移行しても紙運用が部分的に残ります。紙の検査報告書に医師が所見と判断と指示を手書きで記載し署名または記名捺印したものは,スキャナで電子化し保存されますが,タイムスタンプ機能をオプション追加するなどしないと原本性が確保されないシステムでは,紙の報告書を破棄しないで保存することになるかと思います。以下について,ご教示をお願いします。
(1)上記のような検査報告書は,法令等で保存を義務付けられている診療録等にあたるとの理解で間違いないでしょうか。
(2)上記の環境で受診者に検査結果を文書で交付する場合,オリジナルの報告書のコピーを紙でとって保存用の文書とし,元々の手書きの報告書を手渡したり郵送したりすると法令違反になるので,受診者用の報告書を別様式で作成するか原本のコピーを交付するということになるのでしょうか。
(3)検査が保険診療ではなく人間ドックやがん検診など保険外診療の場合も同じ扱いということになるのでしょうか。(大阪府 K)


【回答】

【コピーを渡し,オリジナルは自院で保存する】

(1)検査報告書は診療録等にあたるか

ご質問には,検体検査,放射線,病理等のどの検査報告書か,また,電子的に参照するものかどうかが明示されておりませんが,いずれの報告書も医療法施行規則第20条の十に定める「検査所見記録」に該当すると考えられ,「診療録等」との理解でよいと思います。電子カルテ環境でも同様です。紙カルテ環境の場合では,検査報告書は診療録とまとめて綴られていますので,保存期間は同規則第20条では過去2年間のものとされているものの,実質的には診療録と同様に療養担当規則により診療録に準じ5年間と考えるのが妥当です。

(2)受診者への検査結果交付

原本保管の立場から,紙の報告書であればオリジナルをコピーして渡し,オリジナルは自院で保存する,電子カルテであれば,レポート印刷機能等で出力されたものを渡すことになります。原本は電子媒体であり,あくまでも医療の質の向上のための患者サービスの一環で渡したとの位置づけでよいかと思います。診断に使用したものすべては「原本」として保存義務が発生します。

(3)検診・自費等の際の扱い

検診,自費等の際の扱いについては,状況が不明な点もありますが,検診(「検」と記載されているので)は主に自治体等とがん検診等を行う診療所との契約行為と考えられます。この場合には,民法上の善管注意義務が発生するため,検査結果の原本は診療所側での保存が求められると考えられます。したがって,受診者が希望されるならコピーを渡し,原本は自院で保存する必要があります。
自費診療の場合も準委任契約と考えられ,保険診療と同様に原本は自院に保存する必要があるため,コピーを渡すのが適切です。
なお,本回答は東京弁護士会所属・中川 学弁護士の意見も求めて作成したものです。

【回答者】

中川 肇 富山大学附属病院医療情報部教授

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