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肺MAC症の臨床経過と対応

No.4975 (2019年08月31日発行) P.18

茂呂 寛 (新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野准教授)

菊地 利明 (新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野教授)

登録日: 2019-09-02

最終更新日: 2019-08-28

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    肺MAC症は中高年女性に発症する慢性の呼吸器感染症であり,近年増加傾向にある

    MACは環境生育菌であるため,喀痰から検出されても直ちに診断の確定とはならず,喀痰検体からの複数回の同一菌検出と,典型的な画像所見が揃うことで診断が確定する

    標準治療は多剤併用(クラリスロマイシン,リファンピシン,エタンブトール)による抗菌治療であるが,短期間での確実な効果は保証されず,長期に及ぶ治療が必要となる

    長期間の多剤併用に伴う副作用の管理や治療開始と終了の判断にあたり,明確な基準が存在しないなど,治療の面で多くの課題が残されている

    1. 肺MAC症の概要

    非結核性抗酸菌は,結核菌とらい菌を除く抗酸菌の総称で,自然界の水系や土壌,あるいは水道水や風呂水などの居住環境に広く生息している環境寄生菌である1)2)。本菌の吸入曝露により,慢性呼吸器感染症である肺非結核性抗酸菌症を発症するが,結核菌と異なりヒト-ヒト感染をきたすことがないため,診断確定の際の隔離や届け出は不要である。非結核性抗酸菌は,現在180以上の菌種が報告されているが,わが国における呼吸器感染症の大部分をマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium以下,M. avium)とマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)の2菌種が占めている。これら2菌種は生化学的性状が類似しており,その感染症の臨床像や治療法がおおむね共通であることから,Mycobacterium avium complex〔以下,MAC(マック)〕と一括し,その呼吸器感染症を肺MAC症と呼んでいる。

    わが国における肺MAC症は増加傾向にあり3),市中病院やクリニックでも遭遇する機会が増え,さらに生物学的製剤の使用にあたり注意を要する病態であることから4),呼吸器の非専門医においても,MACおよび肺MAC症に対する十分な理解が望まれる。

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