株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

嚥下障害診療ガイドライン2018年版[ガイドライン ココだけおさえる]

No.4973 (2019年08月17日発行) P.34

兵頭政光 (高知大学医学部耳鼻咽喉科教授)

登録日: 2019-08-16

最終更新日: 2019-08-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 「嚥下障害診療ガイドライン」は,嚥下障害の初期対応手順を示すことを目的に2008年に策定された。その後,2012年に改訂され,2018年に対象者を拡げ,より実地臨床に即した内容に改訂された

    2 ガイドラインでは嚥下障害患者に対する診断および病態評価の流れを示し,その結果に応じてどのように対応すればよいかを示している。その際に最も重視しているのが嚥下内視鏡検査であり,検査の代表的な動画所見と観察のポイントをDVDに収録して添付している

    3 治療では,保存的治療および外科的治療について具体的内容や適応が記載されている。嚥下訓練や外科的治療には多くの手技や術式があるが,嚥下障害の様式と重症度に応じて選択,併用することが重要である

    4 嚥下障害は原因や病態が多岐にわたることから,すべての患者にガイドラインに沿った対応ができるとは限らない。また,嚥下障害治療に関する高いレベルのエビデンスはほとんどない。このため,嚥下障害患者に対してはガイドラインを参考にしながらも,家庭環境や生活状況なども考慮して柔軟に対応することが肝要である

    1 ガイドライン策定と改訂の経緯

    嚥下障害は様々な医療の現場でその対応が大きな問題となっている。しかし,嚥下障害は患者ごとに原因や病態が様々であり,その病態の客観的な評価法も確立されていない。治療においても年齢,認知機能,日常生活動作(activities of daily living:ADL),リハビリテーション環境,介護環境などを考慮して対応しなければならない。このことから,嚥下障害に対して明確なエビデンスを持った評価法や治療法はきわめて限られている。このため,患者に対する標準的な診断・治療が医療現場に十分に行き届いていなかった。

    そこで,医療者が嚥下障害あるいはそれを疑う患者に適切に対応することを支援する目的で,日本耳鼻咽喉科学会が主に一般外来を担当する耳鼻咽喉科医を対象として,「嚥下障害診療ガイドライン」を2008年に発刊した。2012年にその内容が一部改訂され,さらに2018年には対象者を嚥下障害診療に関わるすべての医療関係者に拡げるとともに,最新の知見も含めてより実践的な内容に改訂された。

    残り2,544文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top