昨年7月に公布された改正医療法・医師法に規定された医師偏在対策について、日本医師会の横倉義武会長は23日の日医代議員会で「医師会が試されている」との認識を表明。医師偏在を考慮せずに新規開業を誘導する医療コンサルタント等の業者に対抗するためには、地域の医師会が団結して偏在対策に取り組む必要性を訴えた。
改正法では、外来医療の偏在対策のため、都道府県は今年度、厚労省が示す計算式に基づき、2次医療圏単位で外来医療機能の偏在・不足等を可視化した「外来医師偏在指標」を定める。その上で、全2次医療圏のうち上位1/3を「外来医師多数区域」と定義。2020年度以降は、同区域での新規開業希望者に対して夜間・休日の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生(産業医、学校医、予防接種)など地域で不足する外来医療機能を担うよう求める。また、2次医療圏ごとに医療関係者との協議の場を設け、外来医療機能の偏在・不足等について協議を行うこととしている。
平田泰彦氏(福岡)は、都市部の新規開業のほとんどが医療コンサルタントや大手薬局チェーン、銀行が医師偏在を考慮せずに開業希望者に土地・建物を用意しており、地域医療が混乱していると指摘。その上で、協議の場における地域医師会の権限が不明であり、仮に開業希望者が開業を止めた場合には開業規制になってしまうのではないかと懸念を示した。
さらに、「すでに『学校医や救急当番を止めたいから医師会を止めたい』という人が増えてきている。新規開業医に足りない医療機能を担ってほしいが、それが若い人にいつまで通用するのか危惧を抱く」と訴えた。
羽鳥裕常任理事は今回の外来医療の偏在対策について「まずは、先生方が自主的に経営判断できるように地域の医療の状況を“見える化”することが大きな一歩」と強調。さらに「外来医師多数区域で開業を希望されれば、不足している医療機能をお願いする。これは医師会が行っている活動そのもの」と述べ、「新規開業者すべてに協議を求めているわけではないので、決して、開業規制ではない。この偏在対策は自主的な行動変容を促すことを主眼に置いている」と重ねて強調した。
横倉会長は、「今回のいろいろな(医師偏在対策の)改革は医師会が試されている」と指摘。「医療コンサルタントや薬局チェーン、銀行に対抗するためには、地域の医師会が団結しなければならない。そのためには我々の団結力を強める必要がある」と述べるとともに、「学校医や救急当番をやりたくないから医師会を止めたいという方は、本当に地域医療を担う覚悟があるのかを問うていきたい」と語気を強めた。