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「総合医育成プログラム」とは[プライマリ・ケアの理論と実践(16)]

No.4963 (2019年06月08日発行) P.10

前野哲博 (日本プライマリ・ケア連合学会副理事長)

登録日: 2019-06-07

最終更新日: 2019-06-05

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「明日から実践できる」ということにこだわって作っています。

前野哲博(日本プライマリ・ケア連合学会副理事長)

PROFILE
1991年筑波大卒。94年同大病院総合医コースレジデント。同大臨床医学系講師、同助教授などを経て、2009年より同大地域医療教育学教授。同大付属病院副院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長

日本プライマリ・ケア連合学会と全日本病院協会が連携して実施している「総合医育成プログラム」の第2期のスタートが迫っている。同学会副理事長の前野哲博氏にプログラムの狙いや内容を聞いた。

総合医としてのキャリア形成の支援が必要

─「総合医育成プログラム」開発にいたるまでの背景を教えてください。

高齢社会において医療や介護の需要増加に対応するため、国は地域包括ケアシステムの構築を進めています。こうした中、病気になったら病院で治療し、元気になったら地域に帰るという従来のモデルから、地域で生活を含めてすべてを診るモデルへの転換の必要性や予防医療の重要性が唱えられており、プライマリ・ケアの充実が求められています。その担い手の育成が課題です。

2018年度に始動した新専門医制度では、プライマリ・ケアの専門家を養成するため、総合診療領域が設けられました。しかし、2018年度採用数は184人、19年度は179人と極めて少人数です。総合診療専門医が育つのを待っていては、日本の地域医療は成り立ちません。エキスパートを育てることはもちろん必要ですが、それと同時に、広くプライマリ・ケアを担う医師の養成が求められています。

今の日本のプライマリ・ケアは、長く病院で勤務していた臓器専門医が開業することによって支えられています。一昔前の世代では、医師としてのトレーニング中に自身の専門外を診る経験を積んでいる場合が多く、開業して専門外の診療を請け負うことにあまり抵抗がない医師が多いようです。

しかし最近では、より専門性に特化した研修システムになっており、たとえば外科医になるためには、手術件数の多い病院を選びます。そうした大きな病院では、専門以外の診療をすることはありません。このような背景を持つ医師が将来プライマリ・ケアのフィールドに入る際には、総合医としてのキャリアを形成するための支援が必要です。

今後、地域医療構想に基づいて、地域包括ケアシステムの導入が進めば、そのようなキャリアを選択する医師も増えてくると思います。

また、過去に臓器専門医からプライマリ・ケア医になった医師の中にも、系統的にプライマリ・ケアを学びたい方がおられると思います。本プログラムはそういった医師の生涯教育としても役に立つでしょう。

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