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クラウド型電子カルテで医師不足解消と医学教育に貢献したい[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(1)]

No.4956 (2019年04月20日発行) P.14

登録日: 2019-04-19

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ここ数年の医療機器やICTを活用したシステムの進歩は著しく、「医療の質の向上」「患者の満足度向上」「業務効率化」「経営改善」といったクリニックが抱える課題に対する有用なツールとなっている。本連載では、クリニックの機能を充実させる製品・サービスとその活用法を紹介。第1回はICTを駆使したクラウド型の診療記録システムを活用し、医師不足解消と医学教育に取り組むクリニックの事例を取り上げる。

 

医師偏在に伴う医師不足が地域医療の深刻な問題となって久しい。今年3月に厚生労働省が2036年を医師偏在解消の目標年とする方針を策定するなど一定の対策は講じられているが、即効性は期待できない

こうした状況に危機感を募らせ、ICTを駆使して医師不足解消に向けた取り組みを実践しているのが、福島県いわき市の「いわきFCクリニック」(写真)だ。

いわきFCは東日本大震災から間もない2012年に創設されたサッカークラブ。「スポーツを通じて社会を豊かにする」という理念のもと、「いわき市を東北一の都市にする」ことを目標に活動を続けている。同院は、レストランやトレーニングジム、英会話教室を併設するクラブハウス「いわきFCパーク」の一角に2019年1月、開設された。

同院のコンセプトは、地域の医師不足を解消するためスポーツを軸にした街づくりを進めているいわき市を「スポーツドクターの集まる街にする」というもの。院長は、地元出身で女子サッカー日本代表チームやイタリアの名門サッカーチーム「ACミラン」に帯同した経験を持つ齋田良知さん(順天堂大整形外科講師)が務める。診察日はスポーツの試合が多い毎週日曜日。試合におけるインジュアリーリスクは練習に比べ5倍以上高いといわれており、迅速な応急処置や正確な診断をつけることが予後に大きく影響する。

外来は順大の整形外科医局の若手医師が非常勤で担当。スポーツ医療を現場で学びたい若手医師を各地から集め、診察日を増やすことを目指している。

遠隔アドバイスで若手医師の診療を支援

同院の診療スタイルの特徴は、音声入力も可能なタブレット端末のクラウド型診療記録システムを活用している点にある。手入力の場合でも操作がタッチパネル方式でシンプルなため医師は診察に集中できる。またクラウドを通じて診療記録の共有が可能で、若手医師が診断や治療法に困った時などは遠隔で順大の齋田さんに相談できる。齋田さんは、デジタル技術を積極的に取り入れていくことが、医師不足に対する1つの有力なソリューションとなり得ると指摘する。

「患者さんの情報が、例えば自宅にいてもリアルタイムで共有できるので、より的確なアドバイスをクリニックの医師に送ることができます。また患部を診るためにテレビ電話用の小型カメラも設置しているので、文字や口頭の説明だけでは伝わりにくい情報を目視で確認することがでます。遠隔アドバイスにより若手医師でも経験豊富な医師が診察するのと同じクオリティの医療を提供することが可能になります」

齋田さんは医師の教育という観点からもICT活用の重要性を強調する。

「医師はいろいろな症例に触れ、教わりながらスキルを向上させていくことが大切なのですが、医療過疎地では難しい面があり、若手医師の地方行きを阻んでいる大きな要因になっています。スポーツで怪我をした人を診るのも貴重な機会であり、若手医師が1人で外来を担当することは成長につながるので、それをサポートする仕組みとしてこのクラウド型診療記録システムのような技術はとても有用だと感じています」

外来を担当する桃井康雅さんは、同院のシステムのメリットについてこう語る。「スポーツ医療では復帰のタイミングが大切です。仮にまだ早いのであれば、明確な説明が必要になります。曖昧な答えだと自分で判断して悪化させてしまうこともあります。そういう時に経験豊富な医師からアドバイスをリアルタイムでもらえるクラウド型システムがあることは、医師のスキルアップだけでなく患者さんの治療の理解度や満足度にも影響してくると思います」

医師が診療に集中できるシステム

同院が導入するクラウド型診療記録システムは、いわき市に本社を構える(株)ヘルシーワンの「ヘルシーワンクラウド」(https://www.healtheeone.com/services/cloud.html)が搭載する機能の1つだ。ヘルシーワンクラウドは、事務作業など医師の付帯業務の負担を軽減するために開発されたアウトソーシングサービス。日医標準レセプトソフトORCAから患者情報を入力し、クラウド型電子カルテに診療情報を入力、レセプト業務はヘルシーワンのオペレーションセンターが代行するため、医師は診察に集中できるようになる。齋田さんはヘルシーワンクラウドがもたらす効果についてこう語る。

「いわきFCクリニックは人的資源に余裕がない中で運営しているので、診療に直接関係ない業務をアウトソーシングできるメリットはとても大きいと感じています。写真もタブレットで撮影でき、そのまま電子カルテに記録されるため、極論を言えば設備投資はタブレットの端末だけで済みます。同じような機能を持った電子カルテはほかにもあると思いますが、レセプト代行などいろいろな機能が1つにまとまっているところが嬉しいですね」

ヘルシーワンはこのほか、診療報酬の立て替え・回収代行やキャッシュレス決済を可能にする「ヘルシーワンコレクト」、院内の全情報機器にサイバーリスク保険を付帯した「ヘルシーワン医療情報リスク補償」など医療機関向けの多様なサービスを提供している。

いわき市を若手医師が集まる街に

医師不足に悩む地域では、救急資源を集中せざるを得ず、勤務医の疲弊が激しい傾向にある。いわきFCクリニックが日曜診療を行っているのは、地域の救急施設の負担を軽減するという狙いもある。

「医師の献身的な努力で何とか踏みとどまっている状況です。比較的軽症の整形外科領域の一次救急をいわきFCクリニックで引き受け、少しでも救急病院の負担軽減につなげたい。そのためにスポーツ医療を実践できる場としていわきFCクリニックの認知度を上げ、若手医師がこの街に集まってくる流れを作っていきたいと考えています」(齋田さん)

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