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喘息で呼気の延長がみられるのはなぜか?

No.4952 (2019年03月23日発行) P.59

煙石真弓 (東海大学医学部専門診療学系小児科学)

望月博之 (東海大学医学部専門診療学系小児科学教授)

登録日: 2019-03-22

最終更新日: 2019-03-18

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吸気と呼気では通過する空気の量が同じなのに,喘息では呼気の延長がみられるのはなぜでしょうか。

(鹿児島県 T)


【回答】

【気管・気管支が狭くなる分,時間がかかるため】

これを理解するには,気管の構造,吸気・呼気に携わる一連の胸郭の動きの復習がヒントになると思います。我々は息を吸う際に,胸腔内を陰圧にすることで,肺内外圧較差をつくり上げ,空気を肺の中へ取り込んでいます。胸腔内を陰圧にするために働く筋肉(吸気筋)として,安静時は横隔膜・外肋間筋を主に使用し,努力吸気時では胸鎖乳突筋などの筋肉を使用しています。これにより上下・前後へ胸腔を広げ,胸腔内圧を低下させることで,肺を広げ,肺内へ空気を流入させています。この一連の動きにより,気管構造のうち軟骨支持組織を持たない終末細気管支以下の気管支も肺の広がりに合わせて拡張していきます。

さて,問題の呼気の延長についてですが,呼気は吸気に収縮した筋肉を弛緩させることで受動的に行われていますが,これは安静時呼気でのお話です。強制呼気を行うときは,内肋間筋・腹筋などの呼気筋を収縮させ,積極的に胸郭を縮めることで胸腔内圧を高め,外界へ空気を排泄します。しかし,胸腔内圧を高め,胸郭を縮めていく際に,同時に二次的に肺胞内の空気も減少し,しぼんでいきます。そうすると,肺は含気を失い終末細気管支以下の気管支は狭小化を起こします。軟骨による支持を持たない終末細気管支以下は,肺がしぼむと同時にその高くなった胸腔内圧の影響を受けて狭小化します。この筋肉の収縮と弛緩に伴った胸腔内圧の変化により,吸気に比較して呼気では必然的に終末細気管支以下である末梢気道の狭小化を認めるようになります。これが,吸気・呼気に要する時間を比較した際に,呼気のほうが長い要因と考えられ,正常の安静呼吸における吸気との比率は,おおよそ1:2~1:3と言われています。

では,喘息の状態では,なぜ呼気の延長が目立つのでしょうか。健常者でも吸気に比較して呼気のほうが長いという状態がみられていますが,喘息を有する場合,気道粘膜の浮腫状変化,気管・気管支平滑筋の収縮や分泌物により気管内腔の狭小化が生じており,気管支内腔は狭くなっています。また,喘息発作時にエアトラッピングが生じて肺気腫傾向になっていることにより,胸腔内圧の亢進が呼気時により顕著となるため,呼気時の狭小化がさらに進み,呼気の延長が助長されると考えられます。周囲組織による気管の生理的圧迫や胸腔内圧により空気の通過速度は規定されると考えられますので,これにより通過する空気の量は同じでも,吸気と呼気での空気の通過速度の違いがみられると考えます。「喘息患者の呼気は,狭くなってしまった通路を通過しなければならないので時間がかかる」ということでしょうか。

【参考】

▶ 辻本雄大:呼吸ケア. 2013;11(10):1010-7.

▶ 朴 範子:EMERGENCY CARE. 2009;22(12):1118-26.

▶ 石川 朗:呼吸ケア. 2015;13(4):327-33.

▶ 新田憲市:難病と在宅ケア. 2015;21(6):43-6.

▶ 玉置 淳:呼吸. 2008;27(2):158-63.

【回答者】

煙石真弓 東海大学医学部専門診療学系小児科学

望月博之 東海大学医学部専門診療学系小児科学教授

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