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アルツハイマー病の心身医学的側面

No.4943 (2019年01月19日発行) P.51

福永幹彦 (関西医科大学心療内科教授)

登録日: 2019-01-18

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【周囲の対応次第で治る可能性のある症状もある】

アルツハイマー病には必ず現れる症状として,記憶障害,判断力の障害,問題解決能力の問題,実行機能障害,見当識障害,失行・失認・失語,などがある。これらはこの病気の中核をなす病態であり,如何ともしがたいものである。現在のところ,これらを治す方法はない。現代医療は今のところ,無力である。しかし,認知症患者で問題となる事柄は,この中核症状よりむしろ,これらに伴う不安,抑うつ,焦燥,睡眠障害,心気,暴言・暴力,徘徊,依存などである。これらは,BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)と呼ばれ,前述の脳の病気を持っている患者が,周りの人々と関係する上で起きるものである。疼痛と疼痛行動のような関係と言えばわかりやすいであろうか。

記憶や実行機能の障害があるため,周囲との良好な関係が保てなくなる。食事の直後に食べたことを忘れ,「ご飯食べてない」と言う。そうすると,「今食べたでしょう」ときつく言われる。言ったことを頭ごなしに否定されるのだから,自尊心は傷つき,怒り,悲しみがわいてくる。

こうしてみると,BPSDはアルツハイマー病があるために周囲との関係で起きる病態であるから,心身症と考えることができ,周囲の対応次第で治る可能性のある症状と言える。今のところアルツハイマー病は,治ることを期し難い疾病だが,BPSDは治さなければいけない病状である。対応の鍵となるのは,介護者や医療者が患者の感情の動きに敏感になり,理解しようとする姿勢を保てるかどうかにあるだろう。

【解説】

福永幹彦 関西医科大学心療内科教授

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