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(3)ACO症例提示─診断根拠と治療効果[特集:喘息とCOPDの合併(ACO)]

No.4938 (2018年12月15日発行) P.39

玉田 勉 (東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野講師)

登録日: 2018-12-17

最終更新日: 2018-12-12

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喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)のオーバーラップ(ACO)の存在に気づくためには,COPD症例においてはアレルギー性鼻炎の合併,夜間から早朝に繰り返す咳・喘鳴・呼吸困難,さらに春や秋など季節の変わり目に症状が増悪するかどうかなどに注意を払う必要がある

初診時に喘息要素に乏しいCOPD症例であっても,呼吸器症状の増悪を繰り返すようであれば,ACOへの進展の可能性を考えて,喀痰中好酸球比率,呼気中一酸化窒素濃度(FeNO),血清IgE値,末梢血好酸球数など客観的指標に基づく評価を繰り返し行うべきである

喘息要素が強いACOかCOPD要素が強いACOかによって,使用薬剤の組み合わせの変更でより高い効果が得られる可能性もあり,患者病態に合わせた薬剤選択も重要である

1. 気腫型COPDとして長年LAMAで治療されていたが症状が残存し,数年後にICS追加投与され症状と呼吸機能が改善したACO症例

1 症例1

ACO診断時59歳(初診54歳),女性

主訴:労作時息切れ,咳,痰

既往歴:胃癌手術(54歳時),花粉症なし,アトピー性皮膚炎なし

生活歴:ペットとしてイヌを飼っている

喫煙歴:1日15本,34年間(20~54歳)以降禁煙

現病歴:54歳の胃癌手術前の全身検索にて閉塞性換気障害を認め,精査加療目的で当科に紹介された。当時は,労作時息切れは自覚せず,風邪の後に咳・痰が1~2週間くらい長引く程度であり,喘息の既往や夜間の喘鳴などはなかった。胸部CTにて両肺にびまん性の気腫性病変を認め,気管支拡張薬投与後の呼吸機能検査ではFEV1 2.43L(%pred.103.8%),FEV1/FVC 63.6%と閉塞性換気障害を認めた。短時間作用性β2刺激薬(short-acting β2-agonist:SABA)吸入前後でFEV1 2.20L→2.43L(改善量+230 mL,改善率10.2%)と有意な可逆性は認めず,喘息症状がないことおよび呼気中一酸化窒素濃度値(FeNO)(=19ppb),総IgE値(=59IU/mL),末梢血好酸球数(=90/μL)などが低値であることなども含め,気腫型慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)〔global initiative for chronic obstructive pulmonary disease(GOLD) Ⅰ期〕と診断された。

長時間作用性抗コリン薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA)単剤であるチオトロピウム(TIO)ハンディヘラー(18μg)1日1回吸入で治療開始され,以降は近医クリニックで継続していた。しかし,服薬アドヒアランスは不十分であり,胃癌手術後に一時的な体重減少とともに階段昇降や坂道を登るとき,および平地でも重い荷物を持って歩くときなどに息切れ(=mMRC 1相当)を自覚するようになっていた。59歳時には労作時息切れに加えて,ほぼ毎日咳と痰が多くなり,夜間にはときどき喘鳴も聞こえるようになった。特に春や秋に風邪をひきやすく,2週間くらいこれらの症状が悪化して続くようになったため,COPD治療の再検討のために当科紹介された。
診断根拠:症状からCOPDおよび喘息の合併が考えられ精査を進めた。

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