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わが国のHIV感染症ケアカスケード

No.4938 (2018年12月15日発行) P.55

澤田暁宏 (兵庫医科大学血液内科学内講師)

大谷成人 (兵庫医科大学公衆衛生学講師)

島 正之 (兵庫医科大学公衆衛生学教授)

登録日: 2018-12-18

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【わが国ではHIV感染症患者の70.3%が抗HIV薬での治療に成功しているが,HIV感染症診断率,治療率は世界的目標に届いていない】

世界ではHIV感染症流行の終結に向けて,2014年に国連合同エイズ計画とWHOが「90-90-90」という野心的な治療目標を立てた。これは,“treatment as prevention”の考えのもと,HIV感染者の診断率90%,診断者の治療率90%,治療者のウイルス抑制率90%を20年までに達成する,というものである。わが国におけるHIV有病率は比較的低く,流行の中心とされているハイリスク群の「男性と性行為を持つ男性」を対象とした疫学研究の結果が主に示されており,これまでケアカスケードは示されていなかったが,世界的な目標を達成するために,それを知る必要があった。

そこで,エイズ発生動向報告と,わが国において最も正確なデータのひとつと考えられる献血者データ,エイズ拠点病院へのアンケート調査結果をもとに推計された結果が報告された1)。それによると,15年末時点で生存中のHIV感染者数は2万6670人,そのうち14.4%の3830人が潜在的感染者であり,診断率は85.6%と推計された。また,治療率は82.8%,ウイルス抑制率は99.1%であり,総感染者数に対するウイルス抑制率は70.3%と推計され,世界的な目標には届いていないことが示された。16年の新規HIV感染報告数が1448人であり,06年以降ほぼ同数での流行が続いている。HIV流行を終結させるためには,診断率,治療率をさらに引き上げる対策が必要である。

【文献】

1) Iwamoto A, et al:PLoS One. 2017;12(3):e0174360.

【解説】

澤田暁宏*1,大谷成人*2,島 正之*3  *1兵庫医科大学血液内科学内講師  *2兵庫医科大学公衆衛生学講師 *3兵庫医科大学公衆衛生学教授

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