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痛風発作中・発作後の尿酸値への対処法は?

No.4937 (2018年12月08日発行) P.62

野田健太朗 (三重大学医学部附属病院リウマチ・膠原病センター)

中島亜矢子 (三重大学医学部附属病院リウマチ・膠原病センター教授)

登録日: 2018-12-10

最終更新日: 2018-12-04

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(1)痛風の急性期には,尿酸値を低下させる治療は行わないほうがよいとされているようですが,根拠となる研究はあるのでしょうか。
(2)痛風発作後,1カ月くらい経過し,尿酸降下薬を処方しようとした矢先に再度痛風発作を起こす例を経験しますが,この場合,どのような対処法がよいのでしょうか。

(東京都 T)


【回答】

【血清尿酸値を変動させる介入はしないことが原則である】

(1)急性期の治療について

痛風性関節炎は,痛風発作と言われる急性痛風性関節炎と慢性痛風性関節炎にわけられますが,いずれも関節滑膜に沈着した尿酸塩結晶が関節腔に遊離・出現し,好中球が貪食することによって発症します。わが国での痛風発作の治療は,①前兆期および早期のコルヒチン投与,②極期の非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)ないしステロイド投与,③発作鎮静後の尿酸降下薬の3つからなります。

痛風発作急性期における尿酸降下薬の開始により,関節炎が再燃・遷延することが多くみられます。これは,血清尿酸値が急激に低下することで関節内の尿酸濃度が低下し,尿酸の再溶解が進むことによって尿酸塩結晶が剝離しやすくなり,痛風発作が生じる1)ためとされています。

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版」では,痛風発作発症時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いため,発作中には尿酸降下薬は開始しない,既に尿酸降下薬内服中の場合は中止しないといったように,痛風発作前後で血清尿酸値を変動させる介入はしないことを原則としています2)。発作時に尿酸降下薬を投与した臨床研究の結果は,発症後の痛風発作の再燃率が高かったと報告されていますが3),欧州リウマチ学会のリコメンデーションも含めていつから投与すべきか,明確な結論は得られていない状況です4)~6)

(2)尿酸降下薬開始後の再燃・遷延

初回の痛風発作後の尿酸降下薬開始前に再度発作が生じたり,前述のように尿酸降下薬内服開始後に痛風発作が再燃・遷延することがあります。そのような場合は,尿酸降下薬投与時であれば一度中止し,痛風発作の急性期治療を再度行い,完全に寛解してから尿酸降下薬の再度開始を試みます。その際に発作を繰り返したときには,あらかじめコルヒチン1日1錠(0.5mg)を連日内服する「コルヒチン・カバー」を行いつつ尿酸降下薬を開始することが推奨されています2)7)

尿酸降下薬内服開始時にコルヒチン・カバーを3~6カ月併用することによって,痛風発作の再燃率が低下することが知られています8)9)。コルヒチンを使用できない場合には,NSAIDsの低用量投与,両者とも使用できない場合はステロイドによる予防を慎重に考慮します7)。長期間のステロイド投与に関しては副作用に注意が必要です。

【文献】

1) Becker MA, et al:Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. 2008;27(6):585-91.

2) 日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会, 編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版. メディカルレビュー社, 2010.

3) Feng X, et al:Joint Bone Spine. 2015;82(6): 428-31.

4) Hill EM, et al:J Clin Rheumatol. 2015;21(3): 120-5.

5) Taylor TH, et al:Am J Med. 2012;125(11): 1126-34.

6) Richette P, et al:Ann Rheum Dis. 2017;76(1): 29-42.

7) Khanna D, et al:Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64(10):1447-61.

8) Borstad GC, et al:J Rheumatol. 2004;31(12): 2429-32.

9) Paulus HE, et al:Arthritis Rheum. 1974;17(5): 609-14.

【回答者】

野田健太朗 三重大学医学部附属病院リウマチ・膠原病センター

中島亜矢子 三重大学医学部附属病院リウマチ・膠原病センター教授

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