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■NEWS 労働時間制限よりも睡眠確保が重要―医師の働き方改革検討会

No.4934 (2018年11月17日発行) P.21

登録日: 2018-11-12

最終更新日: 2018-11-12

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厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」は9日、勤務環境改善策について議論した。同省研究班の分担研究者である谷川武氏(順天堂大公衆衛生学)が参考人として出席し、「労働時間制限よりも睡眠確保に留意すべき」と指摘した。

厚労省のタイムスタディ調査によると、就労が週60時間未満で、睡眠が6時間以上の群と、就労が週60時間以上で、睡眠が6時間以上の群では高ストレスや抑うつの関連に有意差は認められなかった。一方、就労が週60時間以上で睡眠が6時間未満の群は高ストレスや抑うつとの関連が有意に認められたという。谷川氏は、世界的な知見としても、労働時間と抑うつの関連は明らかになっていないことを踏まえ、「労働時間制限よりも睡眠確保に留意すべき」と強調した。

谷川氏は慢性睡眠不足について、「主観的な眠気が強くならなくても、客観的な覚醒度は低下し続ける」と問題視。「『多少眠くても頑張らなければ』という医師のモラルの高さが医療過誤などにつながる可能性がある」として、客観的に睡眠状況を示す仕組みづくりを求めた。十分な睡眠のためには、連続勤務時間制限・勤務間インターバル規制の強化や当直時間帯等での睡眠確保が必要だとした。

精神疾患予防として谷川氏は、睡眠確保に加え、ワークエンゲイジメント(仕事に積極的に向かい活力を得ている状態)とワーカホリズム(強迫的かつ過度に働く傾向)の峻別が求められると指摘。ワークエンゲイジメントが高ければ、健康や仕事・家庭満足度向上、仕事のパフォーマンス向上に結びつく一方で、ワーカホリズムが高いと、不健康、仕事・家庭満足度低下、仕事のパフォーマンス低下につながるとした。

谷川氏の発表を受け今村聡構成員(日本医師会副会長)は「自分の経験的にも納得できる。長時間勤務の医師が確実に休養できる仕組みは必要だ」と指摘。山本修一構成員(千葉大病院長)は、「外科医にとって、手術の時間はワークエンゲイジメントそのもの。手術時間が延長されても非常にやりがいを感じる。手術が終わった後に医師が病棟をみる時間などをいかに短くできるかが重要ではないか」と意見を述べた。

睡眠確保の重要性を指摘する谷川武参考人

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