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脂質異常症 [今日の新しい臨床検査─選び方・使い方(4)]

No.4772 (2015年10月10日発行) P.38

監修: 前川真人 (浜松医科大学医学部臨床検査医学教授)

三井田 孝 (順天堂大学大学院医学研究科臨床病態検査医学教授)

平山安希子 (順天堂大学医学部臨床検査医学)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-10

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  • 1. 脂質異常症診断基準の適切な利用を

    脂質異常症は,高血圧,糖尿病などとともに,脳心血管病の重要な危険因子の1つである。わが国では,1997年から日本動脈硬化学会がガイドライン(5年ごとに改訂)を発表してきた。現在では,脂質異常症の診断基準は広く知られているが,その管理はガイドライン通りに必ずしも実践されていない。一方,2014年に日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が,約150万人の健診受診者のデータから算出した脂質検査値の基準範囲1)を発表し,診療の現場に大混乱が生じた。本稿では,脂質検査の適切な使い方について,わが国のガイドラインの概要に沿って解説し,新しいバイオマーカーについても紹介する。

    2. 脂質異常症のガイドラインによる診療

    脂質異常症の診療は,原則として,日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」2)(以下,2012年版GL)に基づいて行う。この2012年版GLは,65歳未満の成人を対象にしたものであるが,65~74歳の前期高齢者にも適用できる。75歳以上の後期高齢者については,脂質低下療法が冠動脈疾患(coronary artery disease:CAD)の一次予防に有効との明らかなエビデンスがなく,主治医の判断で対応するよう記載されている。しかし,CADの二次予防群には後期高齢者でも若年者と同様の管理が推奨される。

    1 脂質異常症の診断

    採血は,10~12時間以上絶食後の早朝空腹時に行う。ただし,急性冠症候群では,入院時に脂質検査用の検体を採取する。これは,入院後に検査や治療のため大量のヘパリンが投与される可能性が高いためである。大量のヘパリンは,総コレステロール(TC)やトリグリセリド(TG)を大きく低下させるため,翌朝の空腹時採血では発症前の血清脂質の正確な評価ができない3)
    基本的検査項目は,TC,TG,HDLコレステロール(HDL-C)の3つである。LDLコレステロール(LDL-C)は,Friedewaldの式〔F式:LDL-C=TC-(TG×0.2)-HDL-C〕を用いて求める4)。LDL-C≧140mg/dLは高LDL-C血症,HDL-C<40mg/dLは低HDL-C血症,空腹時TG≧150mg/dLは高TG血症と診断できる。LDL-Cが120~139mg/dLの場合には,境界域高LDL-C血症に分類する。F式は,TG≧400mg/dLの場合や,食後採血の場合は使用できない。その際は,non HDL-C (=TC-HDL-C)を計算する。
    LDL-C直接法の正確性は,試薬により差がある(コラム参照)5)6)。2012年版GLでは,直接法をLDL-C測定法として推奨していないが,本法は食後検体で測定できる利点もある。現在,研究班が組織され,主要なLDL-C直接法の試薬の正確性と食後採血の影響が検討されている。次回改訂に,これらの結果がどのように反映されるのか注目される。

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