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アルツハイマー病の診断の進展:遺伝子研究の進歩を見据えて

No.4933 (2018年11月10日発行) P.55

山崎聖広 (愛媛大学精神科)

登録日: 2018-11-12

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【末梢血を用いた遺伝子発現の解析を発展させることで,早期診断・治療が期待できる】

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)は,最も多い認知症であり,早期診断と適切なケアが求められている。最新のADの診断基準では,老人斑や神経原線維変化などの病理所見に基づき,MRIなどの形態画像,FDG-PET,アミロイドイメージングなど機能画像や,脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)やリン酸化タウの変化が注目されている。これまで,家族性ADの一部では関連遺伝子変異が同定され,ADとapoE遺伝子との関連が報告されるなど,遺伝因子が注目されている。

近年,ADのゲノムワイド関連解析から,新たに別の遺伝子群が関わることが報告された1)。これらの中には,脂質代謝や細胞内輸送,貪食作用,免疫反応が含まれ,ADの病態が明らかになりつつある。そのひとつABCA7遺伝子は,脳内Aβのクリアランスに関与するとされ,筆者らは,健常者に比較しAD患者において末梢血中のABCA7遺伝子の発現量が増加していること,認知機能と相関していることを確認し報告した2)。この研究は,ADでの末梢血解析の可能性を示唆するものであり,今後,末梢血を用いた遺伝子発現の解析を発展させることで,ADの早期診断・治療が期待できると考えている。

【文献】

1) Hollingworth P, et al:Nat Genet. 2011;43(5): 429-35.

2) Yamazaki K, et al:J Alzheimers Dis. 2017;57 (1):171-81.

【解説】

山崎聖広 愛媛大学精神科

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