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潜在性甲状腺機能低下症を有する不妊症女性の管理

No.4931 (2018年10月27日発行) P.54

谷村憲司 (神戸大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター講師)

山田秀人 (神戸大学産科婦人科教授)

登録日: 2018-10-27

最終更新日: 2018-10-23

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【検査ならびに治療の意義と必要性は?】

潜在性甲状腺機能低下症(subclinical hypothyroidism:SCH)は,血中TSH値が正常範囲以上,かつ,遊離甲状腺ホルモン濃度が正常範囲の状態,と定義される。SCHは甲状腺機能低下症と同様,不妊症の原因となり,妊娠後も流死産,妊娠高血圧症候群,早産,低出生体重,常位胎盤早期剝離や児の知能低下と関連すると考えられている。しかし,否定的な意見もあり,全妊婦を対象とした甲状腺スクリーニング検査は推奨されていない。

一方,体外受精─胚移植(IVF-ET)を計画している不妊症女性において,不成功例の血中TSH値は成功例より有意に高値であったとの報告や,レボチロキシン(LT4)投与群では,プラセボ群に比して,IVF-ET後の流産率が有意に低いとの報告もある。

そのため,米国内分泌学会は,30歳以上の不妊症もしくは,流産既往のある女性に対する血中TSH値測定によるスクリーニングを推奨し1),米国臨床内分泌学会と米国甲状腺学会は,妊娠を計画しているSCH女性に対して,血中TSH≧10mIU/LでLT4を1.6μg/kg/日,4mIU/L<TSH<10mIU/Lなら25~75μg/日投与することを考慮すべきである,としている2)

【文献】

1) Abdel Rahman AH, et al:Endocr Pract. 2010;16 (5):792-7.

2) Garber JR, et al:Thyroid. 2012;22(12):1200-35.

【解説】

谷村憲司 神戸大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター講師

山田秀人 神戸大学産科婦人科教授

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