2017年冬に「喘息とCOPDのオーバーラップ診断と治療の手引き2018」が発刊されました。本手引きを用いることで,喘息と慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)のオーバーラップ(ACO)の診断や治療はどのように変革していくのでしょうか。本手引きの意義と今後の課題についてご教示下さい。日本大学・權 寧博先生にご解説をお願いします。
【質問者】
川山智隆 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門教授
【臨床において活用できる具体的な診断基準が初めて示された】
喘息とCOPDの診断においてはそれぞれを鑑別する必要がありますが,実際の臨床の現場では困難な場合が少なくありません。喘息とCOPDの合併例は,適切な治療が行われないと予後不良になることが知られていますが,これまでの大規模臨床試験では,明確な診断基準がないため合併例が不均一に除外される傾向にありました。その結果,これら合併例の適切な治療法や管理方法の明確なエビデンスは得られていません。喘息とCOPDが合併することは古くから認識されていましたが,年齢とともに増加する傾向にあり,近年の人口の高齢化に伴いますます無視できない問題となりつつあります。
このような状況のもと,2017年に日本呼吸器学会から「喘息とCOPDのオーバーラップ診断と治療の手引き2018」が刊行され,わが国における喘息とCOPDのオーバーラップ(asthma COPD overlap:ACO)の定義や診断基準が示されました。これまで,喘息とCOPDを議論する国際的委員会であるGlobal Initiative for Asthma(GINA)とGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)が合同で,2015年にガイドラインでACOの概念を提唱していましたが,臨床において活用できる具体的な診断基準は示されていませんでした。
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