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介護保険制度のあり方について国民を交えた議論展開を(江澤和彦 )【日本医師会新常任理事に聞く】

No.4926 (2018年09月22日発行) P.16

登録日: 2018-09-21

最終更新日: 2018-09-20

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江澤和彦 さん
職務分担:介護保険・福祉(認知症を含む)、精度管理、精神保健(障害を含む)、図書館

えざわ かずひこ●1961年岡山県生まれ。88年日本医大卒。岡山大第三内科を経て、96年倉敷広済病院理事長、97年介護老人保健施設和光園理事長、2012年倉敷スイートホスピタル理事長。10年岡山県医師会理事。18年6月日本医師会常任理事

日本医師会の常任理事に就任したことについて「微力ながら社会に貢献することができれば、とても幸せなこと」と話す江澤さん。岡山県と山口県で医療機関と介護施設を経営する江澤さんのライフワークは“尊厳の保障”だ。「医療・介護の究極のゴールは、その人らしい暮らしの実現や穏やかな大往生を創造すること。その中で、患者さん1人1人の生活を支え、尊厳を保障することこそが、医療人の最大の使命と考えています」。介護と精神保健の両職務においても「誇りを持って生きる権利を尊重する体制の整備が必要です」と話す。

年間240日の救急当直夜勤明け休みなしを希望して行うほど臨床に邁進していた江澤さんが、急逝した父の跡を継いで経営者になったのは34歳の時。「全職種のサービスの質の責任は経営者にある」との思いから、医療・介護にかかわる全職種を勉強。介護される側の視点を持つため、自身も紙おむつを着用した状態で排泄したり、機械浴を体験した。「介護の学びは大きなカルチャーショックでした。こうした経験を通して、人の尊厳が失われることのないよう、過去の生活にないことを極力排除し、当たり前の暮らしを医療・介護の現場で実践していこうと考えるようになりました」。その実現のために、経営する医療機関・介護施設の建築や外装・内装、照明の選択などすべてを自身が設計・考案。車椅子でも人手を借りずに動ける空間づくりを徹底している。

介護保険制度に関して江澤さんは「健全な持続をいかに担保するかが一番重要な課題」との認識を示す。「少子高齢化により、このまま何も手を打たなければ財源が足りなくなるのは自明。介護保険制度は強制加入の保険方式ですから、被保険者を無視した制度設計はあり得ません。大きなリスクを国民全員でいかに分かち合うのかという観点で、介護保険制度のあり方について国民とともに早急に議論する必要があると思います。介護サービスの利用方法について国民自ら考えることが、地域包括ケアシステムの構築にもつながるのではないでしょうか」

江澤さんは、地域包括ケアシステム構築の10カ条を提唱している。それは①本質は地域づくり・まちづくり、②住民が主人公として取り組む総力戦、③地域課題を踏まえ住民と共に築く“ご当地システム”、④医療介護連携から異業種・異分野連携へ、⑤自助・互助は不可欠、⑥全世代対応型システムの構築、⑦若者や子供たちの住み慣れた地域の視点、⑧医療も介護も生活の視点の重視、⑨地域の一員として地域づくりへ参画、⑩地域力を左右する地域への愛着・想い─というものだ。

「高齢化のトップを走る日本が、地域包括ケアシステムによって、この難局をどう乗り越えていくのか、世界が注目しています。日本人は幾多の災害や困難を忍耐強く知性をもって乗り越えてきましたから、国民とともに知恵を絞れば、必ず道は切り拓かれると信じています」

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