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母体救命の現状と課題,今後の展望

No.4926 (2018年09月22日発行) P.59

清水敬樹  (東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター長/部長)

山下智幸 (日本赤十字社医療センター救命救急センター・救急科)

登録日: 2018-09-19

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  • 妊産婦のたらい回しなどの母体救命が社会問題になって以降,様々な改革がなされています。母体救命に関してはシミュレーションコースなどのoff the job trainingなども充実してきているようです。母体救命の現状,課題,今後の展望などについて,日本赤十字社医療センター・山下智幸先生にお願いします。

    【質問者】

    清水敬樹 東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター長/部長


    【回答】

    【国民が望む医療を把握しつつ,安全で効率的な周産期救急医療の確立を目指す】

    脳出血した妊婦の高次施設搬送先が見つからず最終的に死亡した症例を受け,2008年に日本産科婦人科学会と日本救急医学会が,母体救命救急体制の整備を提言しました。併せて,2010年に厚生労働省告示により,妊産褥婦の救急疾患にも対応できる医療体制が重視されるようになりました。わが国では分娩の約半数が一次施設で扱われており,重症化した場合には高次施設に集約化することが不可欠であることを認識する必要があります。

    2015年には日本産婦人科医会,日本産科婦人科学会,日本周産期・新生児医学会,日本麻酔科学会,日本臨床救急医学会,京都産婦人科救急診療研究会,妊産婦死亡症例検討評価委員会により,日本母体救命システム普及協議会(Japan Council for Implementation of Maternal Emergency Life Saving System:J-CIMELS)が設立され,シミュレーション教育が開始されるようになりました。一次施設における急変対応は,Japan maternal emergency life-saving(J-MELS)ベーシックコースで扱われ,高次施設におけるチーム医療を要する重症妊産褥婦への対応は,J-MELSアドバンスコースで扱われています。全国レベルで母体救命医療が標準化されつつあり,病院総合力および地域総合力で臨む母体救命医療が促進されつつあります。

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