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麻痺・筋力低下[今日読んで、明日からできる診断推論 実践編(12)]

No.4708 (2014年07月19日発行) P.45

監修: 野口善令 (名古屋第二赤十字病院 副院長・総合内科部長 )

佐田竜一 (亀田総合病院総合内科部長代理)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-28

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  • 病 歴

    57歳,女性。主訴は四肢の筋力低下。5カ月前から両上肢の力の入りづらさを,3カ月前から階段の上りづらさを自覚した。近所の整形外科を受診し,NSAIDsや漢方薬を処方されたが,症状はさらに悪化した。その後,生活に支障が出てきたため,当院を受診した。

    スナップ診断

    慢性経過の四肢筋力低下であり,まず神経・筋疾患を考える。自己免疫性筋炎や筋萎縮性側索硬化症などを想起するが,どれも10万人当たり数名程度の発症頻度であるため,網羅的な鑑別が重要である。このとき,heuristicsを用いると誤診することが多い。一方,全身倦怠感や呼吸苦により筋力低下様症状を起こす場合もあり,そのほうが頻度が高い。


    分析的アプローチ

    ■なぜその疾患名が挙がったのか

    まず,本当に筋力低下なのかを考える。全身倦怠感や呼吸苦をきたす疾患群も筋力低下のような症状をきたすことが多い。これらの疾患は頻度も高く,かつ最初の段階で鑑別の方向性を誤ると診断エラーにつながりやすいため,慢性的な筋力低下を主訴としている患者に対しては「全身倦怠感」や「呼吸苦」の鑑別疾患も立てておくべきである。その上で,それぞれにわけて鑑別診断を行う。
    検討すべき疾患はやや多くなるが,慢性的な経過であることから鑑別診断を絞ることができる。
    もちろん,「全身倦怠感」や「呼吸苦」という主訴が,呼吸筋を含めた筋力低下からくることもある。特に本症例は上肢も下肢も筋力低下を起こしているため,全身の筋力低下ととらえて鑑別を進める。
    脳〜神経伝導路〜筋肉までの錐体路を解剖学的に①〜⑤までの5パターンにわけて考えると把握しやすく,見落としが少ない(図1)。

    私のクリニカルパール

    筋力低下を鑑別する際は,「全身倦怠感」や「呼吸苦」というキーワードにも注目する。
    神経・筋疾患は解剖学的に5つにわけて考える。

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