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発熱[今日読んで、明日からできる診断推論 実践編(2)]

No.4695 (2014年04月19日発行) P.43

監修: 野口善令 (名古屋第二赤十字病院 副院長・総合内科部長 )

横江正道 (名古屋第二赤十字病院第二総合内科部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • 病 歴

    70歳,男性。主訴は発熱と悪寒。
    1カ月前から週に3~4回,午後に悪寒が出現していた。悪寒の後に38℃くらいの発熱を呈することもあった。市販の解熱薬を内服すると,すぐに解熱していたため,生活に支障はなかった。しかし,あまりにも長くこの状況が続くため,2週間前に近医を受診し,風邪と診断され,5日分のセフェム系抗菌薬を処方された。抗菌薬を内服することで解熱し,悪寒も出なくなった。しかし,薬がなくなると,以前と同じように午後に悪寒が出現し,夕方~夜に38℃の発熱を繰り返すようになったため,当科に紹介受診となった。

    スナップ診断

    高齢者の発熱と悪寒であり,一般的には「風邪」でも問題はない。しかし,抗菌薬を内服すると一時的に症状がなくなり,抗菌薬の効果がなくなると再び発熱することを考えると,注意して経過をみる必要がありそうである。
    まだまだ情報が不足しており,特異的な病歴聴取が必要である。


    分析的アプローチ

    ■なぜその疾患名が挙がったのか

    発熱の原因疾患を表1に示す。少なく見積もってもこれだけある。
    自覚症状が発熱と悪寒のみであり,臓器特異的症状がないという本症例の病歴のみでは,鑑別診断は非常に広くなる。ウイルス感染症,細菌感染症はその多くを鑑別診断に入れなくてはいけない。抗菌薬の効果をみることで,その2つを区別することはできそうだが,投与期間が5日間と短く,現段階では判定が難しい。バイタルサインや意識の障害はなさそうであり,特別な箇所の強い痛みもなさそうである。しかし,患者がそれらを今回の病気とは関係がないと思い,自分から話さない場合もあるので,医師側から聞く必要がある。
    次のステップでは,これらの鑑別診断の可能性を上げたり下げたりする病歴を確認したい。
    そのほかの自覚症状として,咽頭痛(ウイルス性上気道炎,インフルエンザ),関節痛(インフルエンザ,化膿性関節炎),腰痛(尿路感染症,椎体炎・椎間板炎),排尿時痛(尿路感染症,前立腺炎),咳・痰(肺炎),頭痛(髄膜炎),腹痛(急性胆管炎,尿路感染症),黄疸(急性胆管炎)などの有無を確認する。
    さらに,既往歴,家族歴,社会歴,海外渡航歴,動物接触歴などを確認する。

    私のクリニカルパール

    ウイルス感染症はself-limited diseaseであり,3週間以内にその多くが治癒する。
    fever work-upをする上で,重要なのは病歴である。同じ検査結果でも病歴が違えば解釈が異なる。

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