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カルシウム拮抗薬+フェニトインなど[ドクターのための薬物相互作用とマネジメント(7)]

No.4711 (2014年08月09日発行) P.39

澤田康文 ( ‌東京大学大学院薬学系研究科 医薬品情報学講座教授)

玉木啓文 (NPO法人医薬品ライフタイム マネジメントセンター主任研究員)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-06

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  • サマリー

    フェニトイン(アレビアチン1397904493,ヒダントール1397904493など),フェノバルビタール(フェノバール1397904493など)は肝臓などに発現している薬物代謝酵素を誘導する作用を有する。主にCYP3A4などの代謝酵素により代謝され消失するカルシウム拮抗薬などの医薬品を併用した場合,フェニトイン,フェノバルビタールの代謝酵素誘導作用により効果が減弱することがある。CYP3A4などにより代謝を受けやすいカルシウム拮抗薬は,その用量によっては効果が不十分となることがあるため注意を要する。

    何が起こる?

    フェニトイン(アレビアチン,ヒダントールなど),フェノバルビタール(フェノバールなど)はてんかん発作の予防などに用いられる。これらは,肝臓の薬物代謝酵素誘導作用を有するため,主に肝代謝酵素のCYP3A4などで代謝されるカルシウム拮抗薬と併用した場合,相手薬物の代謝を亢進し,血中濃度を低下させることがある。
    以下にフェニトイン,フェノバルビタールとの併用により,カルシウム拮抗薬の血中濃度の大幅な低下が認められた相互作用例を示した。報告症例のようにカルシウム拮抗薬の血中濃度が半分以下に低下した場合,降圧効果などの薬理効果が十分に得られなくなる可能性がある。

    ❖‌ニフェジピンとフェノバルビタールの相互作用

    カルシウム拮抗薬であるニフェジピンの体内動態に対するフェノバルビタール併用の影響を検討するため,健康成人15人を対象にクロスオーバー試験を実施し,フェノバルビタール100mg/日を8日間反復投与後に,ニフェジピン20mgを単回投与した。フェノバルビタール服用時のAUCは非投与時と比較して約60%減少した〔135ng・hr/mL vs 343ng・hr/mL(図1)〕1)

    ❖‌フェロジピンとフェニトイン,フェノバルビタール,カルバマゼピンの相互作用

    抗てんかん薬を服用している10人の患者(フェニトインのみ服用2人,カルバマゼピンのみ服用4人,フェノバルビタールのみ服用1人,フェニトインとカルバマゼピンを服用3人)がフェロジピン10mg/日を服用した際,フェロジピンの最大血漿中濃度は1.6nmol/Lとなり,抗てんかん薬を服用していない対照群の患者12人(8.9nmol/L)と比べて低く,相対的バイオアベイラビリティは6.6%であった(AUC 2.0nmol・hr/L vs 30.0nmol・hr/L)2)

    ❖‌ベラパミルとフェニトインの相互作用症例

    フェニトイン100mgを1日2回服用していた28歳,女性。階段を上っているときに呼吸困難が起こり,失神した。左心室流出障害が認められ,ベラパミルの投与を開始したが,ベラパミルの投与量を80mg 1日2回から160mg 1日3回に増量しても,血漿中濃度は治療域以下(<50ng/mL)であった。フェニトインの投与を中止したところ,ベラパミルの血漿中濃度は上昇し,投与1時間後と4時間後の血漿中濃度はそれぞれ320ng/mL と195ng/mLとなった3)

    ❖‌ベラパミルとフェノバルビタールの相互作用(臨床試験)

    7人の健康成人男性に対し,フェノバルビタール100mg/日を3週間投与し,投与前後にベラパミルの血中濃度を測定したところ,ベラパミル80mg経口投与時の見かけの経口クリアランスは約4倍に上昇し(945.3mL/min/kg vs 3604.2mL/min/kg),AUC0-∞ は1/3程度に減少した(22.6 ng・hr/mL vs 7.3ng・hr/mL)。静脈内投与時の全身クリアランスも2倍程度に上昇した(9.95 mL/min/kg vs 18.9mL/min/kg)4)

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