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糖尿病の予防・治療に携わる医師・医療スタッフのための セミナー糖尿病診療アドバイス【電子版付】

糖尿病患者さん一人ひとりにわかりやすく説明するために必携の1冊!

定価:2,970円
(本体2,700円+税)

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著: 田中 逸(横浜総合病院糖尿病センター長/聖マリアンナ医科大学客員教授)
判型: A5判
頁数: 144頁
装丁: 2色刷
発行日: 2021年06月14日
ISBN: 978-4-7849-6301-0
版数: 第1版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)

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  • 食事療法・運動療法・2型糖尿病の薬物療法についての新しい情報と,患者さんに対するアドバイスのポイントを紹介しています。
  • 著者の豊富な臨床経験をもとに,多くの情報から取捨選択・整理した上で重要な情報を厳選してコンパクトにまとめています。
  • 著者が普段外来で患者さんに伝えている内容や,患者さんに食事療法や運動療法を続けてもらうための工夫が満載です。
  • 糖尿病の日常診療にすぐに活かせる実践的な内容です。
  • 食事・運動・薬物を総合した効率的な治療につなげるために必携の1冊です!

目次

第1章 食事療法
はじめに
1 エネルギー量の設定
2 適正な栄養バランスとは
3 GLP-1に着目した食事療法
4 食物繊維と主食の工夫で血糖を改善
5 間食と夜食,夕食への対処
6 速食い習慣の是正を
7 飲酒について
おわりに

第2章 運動療法
はじめに
1 運動療法総論
2 運動療法各論Ⅰ:有酸素運動で血糖を改善する
3 運動療法各論Ⅱ:有酸素運動のポイント
4 運動療法各論Ⅲ:レジスタンス運動を生活に取り入れる
おわりに

第3章 2型糖尿病の薬物療法
はじめに
1 初診時の対応
2 治療薬の分類と各薬剤の特性
3 薬物治療の考え方と薬剤選択
おわりに

付 録 HbA1cについて
はじめに
1 糖化反応
2 HbA1cの定義
3 HbA1cの測定法
4 HbA1cに影響する臨床因子
5 HbA1cの限界
おわりに

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序文

筆者はこれまで多くの糖尿病患者さんを拝見してきたが,初診の際に感じるのは,治療に真剣に取り組む気持ちが希薄な方が少なくないことである。その理由は,①自覚症状が何もない,②多忙で病気の治療どころではない,③認知機能が低下して病識が欠如している,④重症の合併症(失明,透析,壊疽で下肢切断など)で自暴自棄に陥っている,⑤担癌状態で余命が短いと言われている,など様々である。理由は何であれ,きちんと糖尿病を治療しないで高血糖を放置すると何が問題になるのであろうか。

高血糖状態が持続すると,筋肉と脂肪を除く全身の細胞内にグルコースが過剰に取り込まれる。たとえばHbA1cが上昇するのは赤血球内にグルコースが過剰に流入するからである。しかし,細胞は一般的に生命維持に必要なグルコース以上の余剰分を細胞外に放出することはできない。そのため不要なグルコースは細胞内で無理に代謝される結果,種々の酵素活性に異常をきたし,細胞内代謝物のバランス異常をきたし,最終糖化反応産物(advanced glycation endproducts:AGEs)と呼ばれる有害物質が産生され,活性酸素も過剰に産生される。これらは「糖毒性」と呼ばれる状態で,文字通り糖が毒性を発揮するという意味である。赤血球は細胞寿命が120日と短いので問題ないが,寿命の長い細胞の場合はこのような細胞内部の変化が細胞機能の異常を惹起し,様々な疾患を発症させる原因になる。糖尿病の代表的な合併症は細小血管障害と動脈硬化症である。加えて,種々の組織の細胞異常による発癌,中枢神経系の細胞異常による認知症や精神疾患,免疫系の細胞異常による感染症の重症化,生殖器系の細胞異常による不妊,骨組織の細胞異常と骨基質異常による骨折,歯周組織の細胞異常による歯周病,皮膚組織の細胞異常による皮膚疾患,など全身に様々な疾患が発症する。一方,高血糖状態下では筋肉細胞は他の細胞と反対にグルコース不足に陥っている。この理由は,筋肉細胞がグルコースを取り込むには,他の細胞と異なりインスリンが必要なためである(ただし,運動刺激によっても取り込まれるが,あくまで運動中の筋肉でのみ起こる変化である)。それゆえ,インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたすと,筋肉細胞内に取り込まれるグルコースが減少する。インスリン不足またはインスリン抵抗性 ➡ 体内最大の組織である筋肉にグルコースが十分に取り込まれない ➡ 血液内にグルコースが滞留して高血糖になる ➡ 高血糖のために筋肉や脂肪以外の細胞内はグルコース過剰になり様々な病気が起こる,これが糖尿病の病態である。一方,筋肉細胞ではグルコース不足により細胞の異常をきたし,結果的に筋肉量と筋力が低下する。高齢糖尿病患者さんはフレイルやサルコペニアの進行が早いのはこのためである。

したがって,糖尿病は「病気の原因になる病気」,「既存の持病を悪化させる病気」である。糖尿病以外の疾患の治療にあたっておられる医師,医療スタッフが気づかれるのは,糖尿病を合併する症例が多いことである。このような例では糖尿病が対象疾患の危険因子または増悪因子になっている。それゆえ,糖尿病を治療する最大の目的は,他の病気を起こさない,持病を悪化させないことである。これは究極の予防治療である。「自分には既に多くの合併症があり,今さら治療を強化しても意味ないです」という方でも,現在の合併症をこれ以上悪化させないこと,発症していない疾患を予防することは重要である。「自分は膵臓癌で余命あと1年と言われています。今から糖尿病を治療しても意味ないです」という方でも,風邪などの感染症が血糖コントロール不良により重症化して肺炎,心不全を発症して1年以内に寿命が尽きないように,残された余命を精一杯生きることが大切である。新規に発症した軽症糖尿病例も,多発合併症を伴う重症糖尿病例も,重い持病を有する糖尿病例も,各々の血糖管理目標をめざしてしっかり治療を行うことが大切であり,そのためには個人に応じたわかりやすく的確な説明やアドバイスを行う必要がある。

そこで,糖尿病の食事療法,運動療法,2型糖尿病の薬物療法についての新しい情報と患者さんに対するアドバイスのポイントを中心にご紹介する目的で本書を刊行することとした。また,最後に付録としてHbA1cについて知っておきたい知識を解説した。糖尿病の基本的な病態については,拙著『健診・健康管理専門職のための新セミナー生活習慣病第2版』(日本医事新報社,2018年)をご参照頂きたい。糖尿病の治療に関する出版物は多数あり,ウェブサイトからも多くの情報を得ることができる。しかし,それを自分なりに理解し,自分の知識とし,わかりやすく人に説明するのは案外難しい。本書は筆者自身が多くの情報から取捨選択し,自分の頭で整理した上で重要と思われるもの,自分が実際に検討したものを取り上げた。いずれも筆者が外来で患者さんにお話ししている内容ばかりである。本書はあくまで筆者独自の考えに基づくものであり,独断や偏りがある点はご容赦頂きたい。鵜呑みにするのではなく,本書を参考にして頂いた上で,読者ご自身がさらに知識と工夫を加えたオリジナルな説明やアドバイスを行ってくださること,食事・運動・薬物を総合した効率的な治療を行ってくださることを願っている。

2021年5月
田中 逸

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