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CRPの使いどころについて教えて下さい。たとえばウイルス感染症と細菌感染症の区別はつけられますか?

登録日: 2026.07.24 最終更新日: 2026.08.27

岸田直樹 (感染症コンサルタント/一般社団法人Sapporo Medical Academy 代表理事)

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感染症診療は,プライマリ・ケアの現場において最も身近でありながら,同時に奥深い専門性を求められる領域のひとつである。医療者は,標準的な知識だけでは答えの出ない問いにしばしば直面する。
jmedmook104『プライマリ・ケアのギモンに応える 感染症Q&A』(日本プライマリ・ケア連合学会感染症委員会/日本感染症学会学際化・国際化委員会監修)では,プライマリ・ケアに携わる医療者が日々の診療で抱く疑問に,感染症専門医が明快に回答している。本書から一部を抜粋し,4回にわけて紹介する。
123はこちら)

Answer
・CRPを抗菌薬投与開始の決定の判断に用いることは推奨されません。
・ウイルス感染症と細菌感染症の鑑別はバイオマーカーを用いずに行います。

専門医A 今回の質問は「CRPの使いどころって何?たとえばウイルス感染症と細菌感染症の区別をつける(特に小児科の先生に機会が多い?)ことって可能なのか?」というものです。これもまた,臨床現場で本当によく遭遇する,重要な質問だと思います。

バイオマーカーを使う場合には,2つのタイミングがあることを意識する

専門医A まず,この質問に対する私のシンプルな答えから申し上げます。CRPが使える,使えないという議論には,2つのタイミングを意識することが重要です。それは,ウイルス感染症と細菌感染症の区別という文脈で使用している「診断」のタイミングと,細菌感染症としての「治療終了の判断」のタイミングです。

ご質問にある「ウイルスと細菌の区別」は,主に「診断」に関する話ですよね。この点について,CRPのようなバイオマーカーがどこまで有用か,特に重症感染症の領域から考えてみましょう。
昨年(2021年)改訂された世界的な敗血症のガイドライン(Surviving Sepsis Campaign)では,敗血症や敗血症性ショックが疑われる成人において,抗菌薬投与開始の決定に際して,プロカルシトニンなどのバイオマーカーを併用することは推奨しないとされています(新しく改訂された,Surviving Sepsis Campaign 2026でも同様の方針です)。つまり,この重症感染症の病態においても,細菌感染症の診断や,それに基づいて抗菌薬を始めるかどうかの判断に,「プロカルシトニンなどのバイオマーカーは使えない」という結論になっているのです。CRPについても,この文脈では同様に,診断に特異的に用いることは難しいと考えられます。
では,CRPやプロカルシトニンといったバイオマーカーには,まったく使い道がないのかというと,そうではありません。前述の敗血症のガイドラインでは,別の側面からバイオマーカーの使用について言及しています。それは,「抗菌薬中止とバイオマーカー」という項目です。敗血症または敗血症性ショックの初期診断を受け,感染症のコントロールが十分であり,かつ最適な治療期間が不明確な成人に対しては,プロカルシトニンなどを抗菌薬中止の決定に使うことを「提案する」(ただし強い推奨ではない)とされています(新しく改訂された,Surviving Sepsis Campaign 2026でも同様の方針です)。
これは,「バイオマーカーを『診断』に使うことは推奨しないが,『治療を終了する』という判断には,もしかしたら有用かもしれない」ということを示唆しています。ですから,感染症におけるCRPやプロカルシトニンといったバイオマーカーの議論をする際には,「診断の話をしているのか」「治療終了の話をしているのか」をわけて考えることがとても重要になります。
ご質問はウイルスと細菌の区別,すなわち「診断」に焦点を当てていますので,この点に関しては,現時点でもやはりかなり悩ましい領域と言わざるをえません。敗血症のような重症例のガイドラインでさえ診断への使用を推奨していないことからもわかる通り,ウイルスか細菌かをクリアカットに区別するために,これらのバイオマーカーを使うことは難しいというのが現状です。

治療が必要な細菌感染症を見逃さない

専門医A ここで,もう一段階上の議論をしたいと思います。抗菌薬を適正に使用しようと考える際に,つい「ウイルス感染症と細菌感染症をきっちりわけよう」と考えがちです。しかし,残念ながらこれは臨床現場では100%区別するのは無理なのです。症状だけで区別するのは難しいですし,CRPなどのバイオマーカーでも完全に区別することはできません。

では,どう考えればよいか?ここで大切な視点は,「細菌感染症を見逃さない」ということではなく,「治療が必要な細菌感染症を見逃さない」ということです。これは,ウイルス感染症だったら抗菌薬は不要だが,細菌感染症だったら必須,という単純なものではないことを意味します。先ほどの質問で,憩室炎や細菌性副鼻腔炎,膀胱炎,気管支炎,細菌性腸炎といった細菌感染症の中にも,抗菌薬なしでも自然に治癒するものがある,という話をしましたよね(Q12参照)。これらの感染症は,体の表面に近い場所で起こる細菌感染症であり,抗菌薬なしでも自然に治癒するという当たり前のことなのですが,医者になると「細菌感染症イコール抗菌薬」という呪縛に囚われ,つい薬を出してしまいがちです。
ですから,ウイルス感染症なのか,それとも「治療が必要な」細菌感染症なのか,という風に考えることが,臨床を考える上でより現実的であり,重要だと思います。新型コロナが風邪と症状で区別できない状況と同様ですね。
では,ご質問の「細菌感染症かの判断にCRPを使う頻度は小児科の先生に多い?」という点や,CRPが臨床現場で使われている現実についてはどうでしょう?

PC医 「治療が必要な細菌感染症を見逃さない」という視点は重要ですね。ところで,CRP以外に白血球や好中球,リンパ球といった検査値の動きも,ウイルスや細菌の区別で参考にされることがあると思いますが,これらについてはどのように考えられますか?

より精密な評価や再検討を促す「気づき」

専門医A 白血球などもCRPと同様に,判断の一要素として考える,という位置づけになるかと思います。これらの検査値だけで,ウイルスか細菌かをクリアカットに診断することはやはり難しいでしょう。

専門医D A先生のおっしゃる通りだと思います。

PC医 小児科の先生方の中には,特にCRPを重視して,CRPが高いから細菌感染症だと判断し,抗菌薬を使おう,という傾向がみられることもあるようですが。

専門医A ええ,そのお気持ちもわかります。特に,小さいお子さんなど,うまく症状を訴えられない患者さんの場合,CRP高値は「訴えの乏しい人で,細菌感染症かもと思う気づき」としては,ものすごく良い検査だと思います。小児や高齢者でCRPが非常に高かったら,「ああ,これは何かヤバい病態が隠れているかもしれない」と気づく契機になります。しかし,そこで直接「細菌感染症だから抗菌薬を使おう」という結論に飛びつくのではなく,そこで立ち止まって,もう一度丁寧に診察を見直したり,必要な検査の敷居を下げたりする,という使い方が正しいと思います。

つまり,CRP高値は,診断や抗菌薬投与の判断に直結させるものではなく,より精密な評価や再検討を促す「気づき」としてとらえるべき,ということですね。

PC医 CRP高値は,重症や注意すべき病態の可能性を知らせる「アラート」としてとらえ,そこから抗菌薬に直結させるのではなく,深掘り診断のきっかけとする,ということですね。

専門医D まさにその通りだと思います。区別自体は困難ですが,CRPをうまく活用することで,見逃したくない患者さんを見つける手助けにはなります。

PC医 A先生,わかりやすいご説明をありがとうございました。CRPについて,診断と治療終了という2つのタイミングを意識すること,そして特に診断においてはウイルスと細菌を無理に区別するのではなく,「治療が必要な細菌感染症」を見逃さないという視点が重要であることがよくわかりました。CRP高値はあくまで「気づき」として活用すべき,という点も非常に実践的です。

〔第13回(2022年)日本プライマリ・ケア連合学会学術大会より〕

執筆:岸田直樹

(本稿は,日本プライマリ・ケア連合学会感染症委員会/日本感染症学会学際化・国際化委員会監修 jmedmook104『プライマリ・ケアのギモンに応える 感染症Q&A』の一部を抜粋・編集したものです。)


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