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尿道狭窄に伴う尿排出障害に使えるワザは⋯⋯?

登録日: 2026.07.23 最終更新日: 2026.07.23

松木孝和 (松木泌尿器科医院院長,香川大学医学部臨床教授) 西野好則 (西野クリニック院長)

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排尿関連症状は泌尿器科領域で最も頻繁にみられる訴えのひとつであり,患者のQOL(quality of life)に多大な影響を与えるが,実際の臨床現場では一筋縄でいかないことが多い。
Jmedmook102『外来で使える 排尿障害診療のワザ』(松木孝和編著)では,排尿に関わる主要な8つの症状(頻尿,夜間頻尿,尿意切迫感,尿失禁,排尿時痛,尿排出障害,尿閉,排尿後尿滴下)を取り上げ,各々の病態生理,鑑別診断,治療戦略を,臨床現場での実践的視点を交えながら概説した。本書から一部を抜粋・編集し,4回にわけて紹介する。(第1回はこちら第2回はこちら第3回はこちら

排尿に関わる主要な症状:尿排出障害(松木孝和)

(1)概要

▶尿排出障害とは,排尿に際して開始までに時間がかかる,尿線が弱い,途中で途切れる,腹圧をかけなければ出ない,排尿後に残尿感がある,などの症状を指す。排尿は,膀胱収縮と外尿道括約筋の弛緩が協調的に行われる必要があり,いずれかの要素に障害があると尿排出障害が生じる。病因は大きく以下のように分類される。

①下部尿路の排出抵抗増大:前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia;BPH),尿道狭窄症,膀胱頸部硬化症など
②膀胱収縮力の低下:加齢,神経因性膀胱,糖尿病性末梢神経障害など
③排尿筋と外尿道括約筋の協調不全:排尿筋外尿道括約筋協調不全

(2)診断

▶尿排出障害の診断には,詳細な問診に加えて,以下の検査が重要である。

・尿流測定:最大尿流率(Qmax),排尿時間,尿流曲線の形状を評価
・残尿量測定(超音波または導尿):正常では50mL以下,通常100mLを超えると有意とする
・腹部超音波検査:前立腺肥大,膀胱壁肥厚などの評価
・尿流動態検査:膀胱排尿筋収縮圧や外尿道括約筋活動の評価
・血液検査:腎機能,前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)

(3)治療

▶治療は原因に応じて選択される。

①BPH

・軽症例では経過観察や生活指導(夜間水分制限,排尿習慣の調整)
・薬物療法
α1受容体遮断薬(タムスロシン,ナフトピジルなど):尿道平滑筋の緊張を緩和
5α還元酵素阻害薬(デュタステリドなど):前立腺体積の縮小
ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase;PDE)5阻害薬(タダラフィル):併存する勃起不全(erectile dysfunction;ED)や下部尿路症状に有効
・外科的治療:経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate;TURP),ホルミウムレーザー前立腺核出術(holmium laser nucleation of prostate;HoLEP)など

②尿道狭窄

・尿道拡張,内視鏡的尿道切開術,尿道形成術

③神経因性膀胱・排尿筋低活動

・自己導尿指導
・排尿筋賦活薬(有効性は限定的)

④機能性・薬剤性

・原因薬剤の中止または変更,精神的要因への介入(心理療法,抗不安薬)

▶尿排出障害は慢性化すると排尿筋への負担がかかるため,膀胱機能の低下を引き起こす。また,長期にわたると腎機能障害や尿路感染症のリスクが増加するため,早期診断と適切な介入が求められる。


以下にケースを挙げる。

問診が重要な尿道狭窄のケース(西野好則)

▶73歳男性。以前から排尿困難,排尿時間遷延があり,他院内科でBPHにて複数種類のα1受容体遮断薬を内服中であるが,服用前後で改善していないため受診。解離性大動脈瘤手術の既往がある。

(1)本症例の考え方と鑑別診断方法

▶以前から排尿困難,排尿時間遷延,α1受容体遮断薬無効である場合,尿道狭窄は念頭に置くべきである。経尿道的手術の既往がなくても,尿道カテーテルの留置の既往があれば可能性はある。①尿道カテーテルの留置期間が長い,②18Fr以上の太いカテーテル留置,③ラテックス製カテーテルは,尿道狭窄を起こすリスクが高い。

▶排尿障害にかかわらず,他院での治療無効例は丁寧な問診が重要である。

▶本症例では,腹部超音波検査を実施したところ前立腺体積は18cm3と大きくなく,尿流測定(uroflowmetry;UFM)を実施したところ,最大尿流率(maximum flow rate;MFR)9.8mL/秒,排尿量210mL,排尿時間58秒,曲線はプラトー(山型でなく台形)であった。問診で,大動脈瘤手術の既往があり,尿道カテーテルを1カ月留置しており,交換するときにかなり痛く,出血したとのことであった。内視鏡検査を行い,後部尿道膜様部での単発,リング状の狭窄を認め,尿道狭窄と診断した。

(2)一般的な対応方法

▶前立腺体積が大きくなく,症状が排尿困難,排尿時間遷延の場合は,膀胱機能低下や排尿筋外尿道括約筋協調不全,尿道狭窄の有無をチェックする。UFMでプラトーを示し,MFRが15mL/秒以下の場合(10mL/秒以下ではなおさら),尿道狭窄を疑う。最終的には内視鏡検査で確認する。

(3)考え方のまとめ

・α1受容体遮断薬無効の場合,前立腺全摘術や経尿道的手術以外に,尿道カテーテル留置の既往を問診する。尿流測定でのプラトー,内視鏡検査で診断する。

ここで身につく!外来で使えるワザ

【尿道狭窄を見落とさないワザ】

・排尿障害患者の初診では,外性器を必ずチェックする。
・尿排出症状を訴える患者の際には,尿道狭窄を念頭に置いておく。
・一般的な前立腺肥大症治療薬が無効な際には,特に注意する。
・尿流測定でMFRのピークが長く続く(プラトー)ときは注意。
・経尿道的手術,短期間でも留置カテーテルの既往,外傷に注意。

(本稿は,松木孝和編著 Jmedmook102『外来で使える 排尿障害診療のワザ』の一部を抜粋・編集したものです。)


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