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前立腺肥大症に伴う頻尿に使えるワザは⋯⋯?

登録日: 2026.06.26 最終更新日: 2026.07.02

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排尿関連症状は泌尿器科領域で最も頻繁にみられる訴えのひとつであり,患者のQOL(quality of life)に多大な影響を与えるが,実際の臨床現場では一筋縄でいかないことが多い。
Jmedmook102『外来で使える 排尿障害診療のワザ』(松木孝和編著)では,排尿に関わる主要な8つの症状(頻尿,夜間頻尿,尿意切迫感,尿失禁,排尿時痛,尿排出障害,尿閉,排尿後尿滴下)を取り上げ,各々の病態生理,鑑別診断,治療戦略を,臨床現場での実践的視点を交えながら概説した。本書から一部を抜粋・編集し,4回にわけて紹介する。

排尿に関わる主要な症状:頻尿(松木孝和)

(1)概要

▶頻尿とは,排尿回数が通常よりも多くなる状態を指し,日中の排尿回数が8回以上の場合が一般的な目安とされる。ただし,飲水量やカフェイン摂取,生活習慣などによって個人差が大きく,臨床的には患者の主観的苦痛(症状)の有無が重要視される。

▶頻尿の病因は多岐にわたるが,大別すると次のように分類される。

①蓄尿障害に伴う頻尿〔例:過活動膀胱(overactive bladder;OAB),間質性膀胱炎など〕
②残尿の増加による頻尿〔例:前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia;BPH),神経因性膀胱など〕
③尿量の増加による頻尿(例:水分の過剰摂取,糖尿病による高浸透圧利尿,薬剤性多尿など)
④心因性・習慣性の頻尿

(2)診断

▶頻尿の診断には,詳細な問診が欠かせない。問診では,1日の排尿回数,排尿時の症状(尿意切迫感,排尿時痛や違和感など),夜間頻尿の有無,水分摂取の状況,既往歴,使用中の薬剤などを確認する。さらに,必要に応じて以下の検査を組み合わせて原因を同定する。

・排尿日誌(尿量,時間,失禁の有無を記録)
・尿沈査検査(膿尿,血尿の有無など)
・腹部超音波検査(膀胱壁肥厚,残尿量の測定,前立腺体積評価など)
・尿流動体検査/尿流量測定(Qmaxの測定など)
・血液検査(血糖値,HbA1c,腎機能,電解質など)

▶原因が特定困難な場合は,膀胱内圧測定による排尿筋過活動の有無の確認も行われるが,これは泌尿器科専門医で行うことになる。

(3)治療

▶頻尿の治療は,原因に応じて多岐にわたる。

①OABによる場合

▶第一選択は薬物療法であり,抗コリン薬(オキシブチニン,ソリフェナシンなど)やβ3受容体作動薬(ミラベグロン,ビベグロン)が用いられる。また,膀胱訓練や行動療法(トイレの間隔を徐々に延ばす)も非常に有用である。

②BPHによる頻尿

▶α1受容体遮断薬(タムスロシンなど),5α還元酵素阻害薬(デュタステリドなど)を投薬し,排尿効率の改善を図る。

③糖尿病や多飲による多尿型頻尿

▶基礎疾患の管理(血糖コントロール,薬剤調整)が必要である。水分摂取量などについての生活指導なども必要となる。

④心因性頻尿

▶心理的アプローチや,必要に応じて抗不安薬投与や認知行動療法などの精神科的介入も検討される。

▶生活指導としては,夕方以降の水分摂取の制限,カフェイン摂取の見直し,定期的な排尿習慣の確立などが考えられるが,個々に応じて指導することが望ましい。


以下に典型例となるケースを挙げる。

前立腺肥大症による頻尿のケース(典型例)(黒田秀也)

▶63歳男性。昼間頻尿,夜2回の夜間頻尿を訴えて受診。数年前から尿線は細く,排尿時間が長くなった(図1)。

(1)本症例の考え方と鑑別診断方法

▶前立腺体積は51cm3。尿線は細いが残尿はなく,ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase;PDE)5阻害薬を開始した。頻尿などの自覚症状はいったん改善したが,1年後に頻尿が再燃したためα1受容体遮断薬を追加したところ,尿線は太くなり頻尿も改善が認められた。

▶内服継続していたが,初診から3年後に徐々に頻尿が増悪して再診。残尿感があり,いったん尿が途切れてからまた排尿があるとの訴えがあったため,残尿を測定したところ半年前には0mLであった残尿が300mLになっていた。

▶内服治療ではこれ以上改善が望めないと判断し,病院にて前立腺肥大症内視鏡手術を施行したところ尿線は太くなり,残尿もなくなったため内服中止となった。

▶術前の前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)値は3.75ng/mLであったが,術後には0.87ng/mLに低下していた。

(2)一般的な対応方法

▶前立腺肥大症による頻尿の原因は,機能的膀胱容量が低下するためである。通常の「1回排尿量」および「がまん尿量」を測定することにより,患者の膀胱容量を把握することができる。正常人の1回排尿量は200~300mL,がまん尿量は~500mL程度であり,前立腺肥大症患者ではしばしば1回排尿量が200mL以下になる。

▶前立腺肥大症で機能的膀胱容量が低下するメカニズムは下記の通りである。

・腫大した前立腺が膀胱刺激症状をきたし,尿意切迫感などの過活動膀胱症状を呈する。
・排尿障害のため残尿量が増加し,機能的膀胱容量の低下をきたす。
・高度な排尿障害となり残尿が著明に増加(500mL以上)し,慢性尿閉・溢流性尿失禁の状態になったケースでも,頻尿を訴えて受診することが多い。

▶前立腺肥大症の診断は腹部超音波検査で行う。経腹的検査と経直腸的検査があるが,通常は経腹的に行う。前立腺の体積測定のみではなく,形態を観察することが重要である。

▶中葉肥大に典型的な,前立腺膀胱内突出(intravesical prostatic protrusion;IPP)が大きな症例では排尿障害をきたしやすい。

▶同時に膀胱残尿測定を行うが,100mL以上の残尿がある場合には注意を要する。

▶排尿状態の把握には測定機能つきの便器で尿流測定を行うことが望ましい。泌尿器科では必須の検査である。

▶前立腺癌の罹患率が高くなっており,前立腺肥大症患者では必ずPSA値を定期的にチェックすること。基準値(<4.0ng/mL)を超えた場合には専門医にコンサルトが必要である。

▶薬物治療の3つの柱として,α1受容体遮断薬,PDE5阻害薬,5α還元酵素阻害薬の3薬がある。保険的には3薬の併用は可能である。

▶5α還元酵素阻害薬は前立腺体積を縮小させるが,PSA値に影響を与えるので,投与前にPSA値が安定していることを確認する必要がある。

(3)考え方のまとめ

・前立腺肥大症は前立腺の良性過形成により下部尿路閉塞をきたす疾患で,年齢とともに緩やかに進行する慢性進行性疾患と考えるべきである。治療が長期間に及ぶケースが多く,定期的な前立腺体積,残尿量,PSA値のチェックを行うことが重要である。

ここで身につく!外来で使えるワザ

前立腺の形態は症例により様々で,腹部超音波検査で前立腺の形態を把握することが適切な治療に直結する。IPPが大きい前立腺や縦長の前立腺では排尿困難が強くなることが多く,手術適応の判断の根拠となる。

飲水過多の症例では排尿直後に残尿を認めることがある。残尿量は刻々変化すると考えるべきで,こまめに膀胱残尿測定を行うことが,より良い診療につながると考えている。

(本稿は,松木孝和編著 Jmedmook102『外来で使える 排尿障害診療のワザ』の一部を抜粋・編集したものです。)


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