
季節はすっかり秋めいてきたのですが,一足飛びに冬になったかと思う朝もありますね。前回に続き,今回もST部分の性差についてのお話をします。
まずは,少しだけ復習をしておきましょう。ST部分で生じる性別による差違は,どこの誘導で見られましたか?―そう,V1〜V4*1です。
これらの誘導で性別によるST波形の違いを論ずる場合,着目点は次の2点でした。
①STレベル(J点上昇の有無)
②ST角(度)(ST部分の傾斜度)
①では,「ST偏位」(ST displacement)のうち,“上昇”に注目して下さい。基線(T-P/T-QRS/Q-Qライン)に対してJ点が上昇(≧1mm)している誘導が,V1〜V4のどこか1つでもあれば“YES”です。
②に関しては,正直あまり聞き慣れないし,暗記もなかなか難しいですよね? 忘れていたという方は,【前編】を速攻で見直して下さい(No.5295,第85回参照)。
J点とST60〔J点から1.5mm(60ms)右方のST部分〕を結んだ線が横軸(水平線)となす角度という定義を忘れても,何となく,J点で引いた“接線”と水平線とでつくられる角度のイメージで十分です。ちなみに,「20°」がカットオフ値でした*2。
なお,4つの誘導(V1~V4)すべてでST角(度)を調べろと言われると,気が滅入りそうになりませんか?そんなとき,“サボり屋”のボクなどは,サッとすませようと画策します。最大のT波高を呈する誘導でのみSTレベル・角(度)をイメージしてお茶を濁すくらいで“満足”するのです。もちろん,真似をするかどうかは,皆さん次第ですがね。
「そんなこと言われても,どの誘導を選ぶか悩むよなぁ〜」という方! それならば,エイヤッと“V2一択”でSTレベル(J点)とST角(度)をチェックするというルールに決めませんか?もちろん,これはあくまで経験則ですから,当てはまらないケースもあることは申し上げておきます。
ただ,多くの場合,STレベルはV2で最高となりますし(No.5293,第84回参照),何事も厳密に考えすぎても息が詰まるので,気楽にいきましょう。それが心電図をキライにならない秘訣だと思っています。
*1 心筋梗塞に関連して用いられる「前壁誘導」という表現でも,ほぼ同義です。
*2 具体的な数値を暗記するよりも,若年(男性)ほど角度が急峻になりやすいという傾向を知っておきましょう。