今回は,「ST部分」に関して,“知っ得”的な知識のお話をします。「ST部分」 は,英語では,ST-segmentと表記されます。具体的には,QRS波の「おわり」(≒S波)からT波の「はじまり」に相当し,2つの波をつなぐ“架け橋”のような箇所だと考えて下さい。では,スタートです。
▶ST部分・偏位のおさらい
皆さんは,ST部分と聞くと,何を思い浮かべますか? 多くの方は,ST部分の“変化”と虚血性心疾患をリンクさせるのではないでしょうか?…基本はそれでOKです*1。ST部分の大きな意義は,それ単体というよりは,ベースライン(基線)からの変化―すなわち,「ST上昇」と「ST下降」*2にあるわけです。これらをまとめて「ST偏位」と言いますが,基本的な計測法を図2にまとめました。
まずは,“基準”となる基線です。最も標準的なのは, T波の「おわり」とP波の「はじまり」を結ぶ T-Pラインでしょうか。通常はフラット,“横一文字”であり,心電図の世界における“海抜0m地点”とも考えられます。調律によっては,P波がないこともあるため,(直後の)QRS波の「はじまり」を結ぶ“T-QRSライン”のほうが,一般的な言い方かもしれません*3。