皆さん,いかがお過ごしですか? とても暑かった2025年の夏から,季節の移り変わりが少しずつ感じられるようになってきた気がしますよね。
前回は,ST部分(ST-segment)の“変化”―より正確には「偏位」の評価法の基本から,胸部誘導におけるV2,V3の特殊性について解説しました。
また,“STEMI”〔ST上昇(型)心筋梗塞〕を引き合いに,性別や年齢によってST部分の解釈が異なることについても少し触れました。
今回から2回にわけて,“延長戦”として,ST部分における“男女の違い”(性差)について,わかりやすく解説します。では,スタートです。
▶心電図に性差はあるか?
そもそも,皆さんは,心電図波形に性差があるってご存知でしたか?
個人的な見解では,「対象が男性か女性か」を意識して心電図を眺めているという方は,正直あまり多くないのでは,と推察します。
しかし,純然たる“違い”があるんです。具体的な例の1つに,「QT間隔」が挙げられます。補正QT間隔の上限値は,男女で微妙に異なります(男性:450ms,女性:460ms)1)。
ほかの例として,ST部分にも性別の影響が現れやすいとされています2)。今回はそのお話をしようと思っているわけです。