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オウム病

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-19
望月 徹 (日本医科大学武蔵小杉病院感染制御部部長)
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  • ■疾患メモ

    オウム病は,鳥との接触に関連する非定型肺炎と,随伴する多彩な肺外症状を呈するChlamydophilaChlamydiapsittaci(以下,C. psittaci感染として古くから知られている人獣共通感染症である。確定診断が難しく,飛沫感染による集団発生もあるので,常に疑いを持って対処すべき疾患の1つである。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    発熱・咳嗽が50~100%と高頻度だが,咳嗽は進行してから出現することが多い。

    咳嗽が出現するまでは,30~70%の頻度で頭痛,筋肉痛,悪寒など,非特異的な肺外症状が多く随伴するのが特徴的である。5~15日の潜伏期間を経て,発熱,除脈,気分不快感,脾腫などチフス様症状が始まり,進行すると,乾性咳嗽,頭痛,筋肉痛,悪寒などの非定型肺炎像を呈する1)

    呼吸器症状主体の多彩な全身症状なので,症状からはオウム病を特定するのは難しい。他の非定型肺炎との原因鑑別を要するが,比較的徐脈,発疹,血痰,鼻出血,脾腫があれば,オウム病と診断する手がかりとなる。

    【検査所見】

    白血球数は通常正常範囲か軽度上昇,2/3の患者は核の左方移動,回復期には好酸球増多を呈する。肝機能検査は50%が軽度異常,胆汁うっ滞を示唆する所見を呈する。

    発症初期4日間で血液から,最初の2週間で喀痰から病原体C. psittaci培養が陽性となるが,通常培地では同定できず,細胞培養や動物への接種でしか同定できない上に,これらの手法は危険を伴うので,血清検査が推奨される。

    約75%(50~90%)の患者に胸部X線で異常が認められ,聴診所見以上に異常所見が強いことが多い。

    最も頻度の高い所見は,単発の下葉コンソリデーションで,異常陰影の90%に認められる。しかし,均質なスリガラス陰影,肺門から放射状に広がるまだらな網状陰影,時に無気肺を伴う部分的もしくは葉全体のコンソリデーション,粒状パターン,片側もしくは両側肺門部拡大,haloサインなど,多彩なパターンが報告されている2)

    これらの所見は,治癒するまでの間20週にわたって認められ,平均で6週間継続する。胸水貯留は最大50%の症例に認められるが,通常少量かつ無症候性である1)

    痰・胸水・凝血からのC. psittaci培養は可能だが,検査技師がC. psittaciに曝露する危険性があるので,組織検体での直接同定法は標準的ではなく,血清検査にゆだねる。

    微小免疫抗体法(MIF法)の免疫グロブリンMが16倍,もしくは2週間間隔で補体結合法(CF法)にて4倍以上の上昇か,検体でのMIF抗体価32倍で確定診断とする。確定ヒト症例と疫学的に接触歴があり,整合する臨床像を持つか,CF法かMIF法で検体が1回でも最低32倍であれば疑い症例とする。

    核酸増幅法(PCR法)によって鳥やヒト検体からC. psittaciは検出でき,常時診断できる。しかし,PCR法は,ルーチンにできる検査ではなく,偽陰性もありうる。

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