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(2)新生児マススクリーニング対象疾患の診断と治療 [特集:新生児マススクリーニングの今]

No.4838 (2017年01月14日発行) P.35

但馬 剛 (国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室室長/広島大学医学部小児科客員准教授)

登録日: 2017-01-13

最終更新日: 2017-01-11

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  • 先天代謝異常症の新生児マススクリーニング陽性例に対する診断は,異常代謝産物の生化学的分析・酵素活性測定・遺伝子解析によって進める

    タンデムマス法の導入によって対象疾患が大幅に拡大しており,疾患ごとに適切な確定検査を組み合わせて実施する必要がある

    確定診断された小児例は,食事療法と各種ビタミン類の補充などを基本として管理する。異化亢進状態が急性発症の誘因となる疾患では,グルコース輸液を主体とするsick day対応によって未然に防ぐことが重要である

    1. 新生児マススクリーニング陽性でも診断は容易ではない

    新生児マススクリーニング(newborn screening:NBS)で「陽性」となった何ら症状のない乳児が,ある病気に本当に罹患しているのか,実際に発症するリスクはどの程度なのか,治療介入はいかにあるべきか,などについて明らかにすることは必ずしも容易ではない。そのために必要とされる検査は特殊なものが多く,それらを多様な対象疾患に応じて備える必要があるが,個々の疾患はいずれも稀少なものであり,それぞれを専門とする研究者に大きく依拠しているのが現状である。
    本稿では,新たに全国導入されたタンデムマス法の対象疾患に関する精査・診断の実際と,治療管理の概略を紹介する。

    2. 生化学分析による診断

    NBSで陽性となった無症状の新生児を診断する際の基本は,特異的な代謝産物の異常高値(または低値)を明らかにするための様々な生化学検査である。その結果は酵素活性測定や遺伝子解析による確証を要するが,疾患によってはそのまま確定診断所見として扱われる。

    1 アミノ酸代謝異常症・尿素サイクル異常症(表1)



    NBS開始当初からの対象3疾患であるフェニルケトン尿症/高フェニルアラニン血症,メープルシロップ尿症,ホモシスチン尿症1型に加え,タンデムマス法の導入によって,シトルリン高値を指標として発見可能な3疾患すなわち,シトルリン血症1型,アルギニノコハク酸尿症,シトリン欠損症が新たに発見できるようになった。診断の基本は「血漿アミノ酸分析」であるが,表1に示すようにそれぞれ補助的な特殊分析が必要となるため,速やかに漏れなく実施することが重要である。

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