在宅医療・ケアにおいて多職種連携・協働は必須であり,多職種間の情報共有は欠かせない。しかし,関わる職種が所属する医療機関や事業所はバラバラで,訪問する時間帯もまちまちであるために情報共有が行いにくく,今まで情報共有に使われていた電話,FAX,連絡ノート,カンファレンスなどは利点もあれば欠点もある。このような中で,最近では多職種連携専用のICT(information and communication technology)ツールを用いた情報共有が行われるようになってきた。そのほかにも様々なICTツールがあり,これらを適切に用いることで,より活発な多職種連携・協働が行えるようになってきている。
また,IoT(internet of things)と呼ばれる,様々なモノがインターネットに接続される仕組みにより,医療・介護に関するデバイスがインターネットにつながって,今までにない新たな取り組みが行われるようになってきている。さらに,これらによる情報をより有効に利用するためAI(artificial intelligence)が用いられることも多くなってきた。
これらのICT,IoT,AIを用いて医療DX(digital transformation)を進めていくことは,在宅医療においても重要なことであると考えられている。
厚生労働省は,医療や介護の現場におけるICTの利用を進めており,ICT導入支援事業なども行っている。そのほかにも各自治体でICT利用促進に関する取り組みを行っている場合も多い。多職種連携ICTツールの利用を積極的に進めている自治体もあるが,地域によって利用するICTツールが異なることもあるので,注意が必要である。
また,情報通信機器等を用いた診療(いわゆるオンライン診療)は在宅医療においても認められており,退院時等のカンファレンスや,共同指導などもビデオ通話システムの利用で算定が可能である。
一方,IoTの利用に関しては,まだ研究段階のものが多い。実証事業等として地域で利用されているケースもあるので,今後に期待したい。
ICTを利用した多職種連携を行う場合,利用するICTツールについてはその地域で用いられているものを利用するのがよいと思われる。一般的には,患者ごとにタイムラインを作成し,そのタイムラインへの参加者を決定していくが,タイムラインの管理は主治医が行うことが多い。また,主治医は在宅医療における多職種連携だけでなく病診連携も行うため,これらの連携の要として在宅の情報を病院へ,病院の情報を在宅へ伝える役割もあり,適切にICTを利用していくことが求められる。
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