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自己免疫性肝炎[私の治療]

No.5057 (2021年03月27日発行) P.38

鈴木義之 (虎の門病院肝臓センター内科部長)

登録日: 2021-03-25

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  • ウイルス性,アルコール性などの明らかな誘因がなく発症する原因不明の肝障害であり,主として自己免疫学的機序が発症に関与していると考えられる疾患である。自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)は,中年以降の女性に好発し(男女比1:6),通常は慢性,進行性に肝障害をきたす疾患であるが,時に急性肝炎様の発症様式をとる場合もある。

    ▶ 診断のポイント

    本疾患を念頭に置いておかなければ診断にたどり着くことができないことがある。特に近年では非定型例が多く,特異的な診断マーカーが存在しないため,診断困難例が多く存在する。臨床検査所見としては,抗核抗体および抗平滑筋抗体などの自己抗体陽性,血清IgG高値を高率に伴う。また,わが国ではHLA-DR4陽性症例の頻度が高い。発症には急性,慢性のいずれも存在するが,無症候性例では健診等の血液検査でAST,ALTの上昇を契機に発見されることもある。急性発症の場合には,上記のような特徴的な検査所見を認めず急激に進展,肝不全へと進行する場合があり,診断に難渋する。

    典型例では門脈域の線維性拡大,単核球浸潤を認め,浸潤細胞には形質細胞が多い。肝細胞の,多数の巣状壊死,帯状,架橋形成性肝壊死もしばしばみられ,また,肝細胞ロゼット形成も少なからずみられる。門脈域の炎症が高度の場合には胆管病変も伴うことがあるが,胆管消失は稀である。

    ▶ 私の治療方針・処方の組み立て方

    診断にあたっては,国際診断基準を参考にしながら難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班(厚生労働省難治性疾患克服研究事業)の診断指針に沿って行うことが基本である。海外では国際AIHグループ(IAIHG)のスコアリングシステムが提唱されているが,班研究で策定された診断指針は,近年のわが国の全国調査をもとにその実態に沿って頻繁に見直しを行いつつ改訂されており,日本人のAIHを診断する上で非常に有用である。

    診断には上記の諸特徴に加え,肝炎ウイルスを含むウイルス感染,薬物性肝障害,非アルコール性脂肪肝炎など,既知の肝障害の原因を除外することが重要である。

    診断基準に合致しない急性発症症例や急性増悪例では,診断の遅れから重症化し肝不全に陥ることもあり,迅速な対応が必要である。再燃・再発が多く,薬剤投与にあたっては患者への説明,コンプライアンスを十分に把握した上で対処することが大切である。

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