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先天性難聴[私の治療]

No.5006 (2020年04月04日発行) P.48

工 穣 (信州大学医学部耳鼻咽喉科学教室准教授)

登録日: 2020-04-02

最終更新日: 2020-03-31

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  • 先天性難聴の発生頻度は,おおよそ出生1000人に1人である。新生児聴覚スクリーニングの普及と精度向上により,難聴児が早期発見されるようになった。先天性難聴の60~70%以上に遺伝子が関与していることが推測されており,現在までに90種類以上の原因遺伝子が特定されている。重度難聴児には1歳前後に両側人工内耳手術が行われ,良好な聴取能のもとでの療育を行うことが可能となっている。

    ▶診断のポイント

    生後1カ月までに新生児聴覚スクリーニングを終了,3カ月までに耳鼻咽喉科での確定診断,6カ月までに療育を開始することが推奨されている。

    ハイリスク児(難聴家族歴,子宮内感染症,頭頸部奇形,低出生体重,高ビリルビン血症,心奇形合併など)や先天ウイルス感染症(TORCH症候群)児は,非遺伝性難聴の大部分を占めるため,初期から難聴の可能性を考えて精査を行う。

    新生児聴覚スクリーニングで要精査となった児については,聴性脳幹反応(auditory brainstem response:ABR),聴性定常反応(auditory steady state response:ASSR),耳音響放射(otoacoustic emission:OAE),条件詮索反応(conditioned orientation reflex audiometry:COR)などで精査を行う。

    難聴が認められる児については,遺伝子検査を行う。日本人難聴患者に特徴的で頻度の高い19遺伝子154変異を次世代シークエンス法+インベーダー法にて網羅的・効果的にスクリーニングする検査が健康保険適用となっている(GJB2,SLC 26A4,CDH23遺伝子変異による難聴が多い)。

    先天性難聴の約20%に内耳奇形が認められるため,CT/MRI検査を行う。画像所見に基づくSennaroglu and Saatciの分類は,胎生期の形成異常時期と合わせて考えることができる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    難聴の程度に合わせて,できるだけ会話音域がカバーできるように補聴器装用を行う。高度・重度難聴児では補聴器の装用閾値が不十分になる例が多いため,人工内耳装用を積極的に検討する。

    随伴症状を伴う場合には症候群性難聴を疑う。主なものはアルポート(Alport)症候群(腎障害),BOR症候群(耳瘻孔,内耳中耳奇形,尿路奇形),ペンドレッド(Pendred)症候群(めまい,甲状腺腫),アッシャー(Usher)症候群(視覚障害),ワールデンブルグ(Waardenburg)症候群(色素異常),トリーチャー・コリンズ(Treacher Collins)症候群(小顎,小耳,口蓋裂等)などである。

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