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下咽頭癌[私の治療]

No.5003 (2020年03月14日発行) P.49

朝蔭孝宏 (東京医科歯科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

登録日: 2020-03-12

最終更新日: 2020-03-10

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  • 下咽頭癌は飲酒・喫煙による発がんが一般的である。初期の症状としては咽頭違和感などに始まり,嚥下時通過障害,咽頭痛,頸部腫脹(リンパ節転移)などに進行していく。頭頸部癌の中では頸部リンパ節転移や遠隔転移をきたしやすく,予後不良な疾患である。また,食道や胃に高頻度に重複がんがみられることが知られている。治療後の禁酒・禁煙指導は必須である。

    ▶診断のポイント

    経鼻内視鏡検査を用いて,modified Killian法やValsalva法を行いながら病変を見出し,生検によって診断が確定する。造影CTにより進展範囲,頸部リンパ節転移の評価を行う。上述のように,上部消化管の重複がんが多いので,上部内視鏡検査を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    T1,T2症例においては根治は当然のこととして,喉頭温存をめざす。がんの浸潤が粘膜下層までで固有筋層に及んでいない表在癌でN0症例であれば,経口的腫瘍切除術を第一選択とする。当院では内視鏡的咽喉頭手術(endoscopic laryngopharyngeal surgery:ELPS)が標準化されている。本術式の発展により,今日では外切開による喉頭温存下咽頭部分切除術が行われることはきわめて稀となってきた。一方,内視鏡所見上では表在癌と判断されるケースでも,頸部リンパ節転移がある症例は内視鏡所見以上に深部浸潤している危険性があると判断して,ELPSは行っていない。T1N(+)症例では放射線単独,T2N(+)症例では(化学)放射線治療を第一選択とする。T3症例では,比較的病変が小さな症例に対しては喉頭温存目的で化学放射線治療を行う。進行例で化学放射線治療による病変の制御が困難と思われる症例に対しては,咽喉頭食道摘出術(咽喉食摘術)を行う。T4a症例では化学放射線治療による制御は困難なので,咽喉食摘術を行う。

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