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掌蹠膿疱症[私の治療]

No.4978 (2019年09月21日発行) P.46

村上正基 (愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学准教授)

登録日: 2019-09-22

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  • 無菌性膿疱を主徴とする代表疾患のひとつで,手掌足底に寛解と増悪を繰り返す。欧米では膿疱性乾癬の限局型とする考えもあるが,わが国では独立疾患との考えが優勢である。病巣感染,喫煙との関連が強く示唆され,胸肋鎖関節症(掌蹠膿疱症性骨関節症)を合併することがある。

    ▶診断のポイント

    皮疹は一見すると汗疱様にみえるdeep seated vesicleから始まり膿疱・痂皮へと変化する。紅斑や鱗屑を伴うことが多く,手湿疹,手掌足底型尋常性乾癬などとの鑑別を要する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    現時点では対症療法が中心となるが,自然経過で寛解・治癒する例も多く認められるため,患者に治癒の可能性があることを説明し,根気よく取り組む姿勢が最も重要である。そのためには,やや長い時間を割いて病気の説明や取り組みなどについて説明をする必要があるが,多忙な日常外来診療の時間内にサッと済ますことは時として困難である。確定診断に苦慮する場合や,経過が長くなっても治療経過が思わしくない症例などについては,速やかに掌蹠膿疱症専門外来などを掲げる大学病院,基幹病院へ紹介することも念頭に置く。

    難治で再燃と寛解を繰り返し,長い経過をとることが多い。根気よく加療を継続していくと,自然に再燃と寛解の間隔の延長や,再燃時の皮疹のフレアアップの程度が軽度になることを経験するが,これは根治に向かっている兆候のひとつとしてとらえ,患者が途中であきらめてドロップアウトしないように患者・医師関係の構築が必要である。

    増悪因子として,①喫煙,②病巣感染(特に歯性病変)の関与が大きいことがあり,これらの改善により速やかに症状が消退する症例も経験する。ただし,効果が明らかになるまでの時間は患者によるとはいえ,かなり長期になる場合もあるので,気短かに結果を求めることはできないと心得るべきである。

    増悪因子の検索・改善を行うとともに,現在生じている皮疹の改善を下記の治療のコンビネーションにより試みる。残念ながら,掌蹠膿疱症に対して経験的に試みられてきた治療方法の多くには,いまだ保険適用外のものが非常に多く含まれており,実際に行う場合には注意が必要である。また,外用療法のみで治癒する症例もあれば,種々内服療法や光線療法の併用を行っても皮疹が消失しない症例がみられることは言うまでもなく,いったん消退した皮疹(特に水疱・膿疱)がしばらくして(数カ月から年)再燃するということは,病態を生じる原因はいまだに除去されていない(あるいは新たに曝露されている)という可能性を考慮すべきである。

    2018年12月に世界初わが国発の掌蹠膿疱症に対する生物学的製剤としてグセルクマブ(ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤)が適用追加となった。通常治療が十分に試みられてもなお満足な結果が得られない症例に対して適応を考慮するという位置づけになるが,逆に,「やることをやってみれば,その先にこのような画期的な薬剤がある」という事実も,患者の治療意欲の向上に貢献できるのではないかと期待される。

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