新薬開発は多様性を増し,人的資源も含め1つの地域で行える時代ではなくなっている。これを受け,各地域が規制を共通化することにより,国際化に対応しようとしている。1990年に日米欧で創設された医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use:ICH)は2015年に法人化された。加盟国も増加し,効率的な新薬開発のための活動を行っている。17年,ICH-E17(国際共同治験)ガイドラインが合意され,18年には各地域で施行されることとなった。
海外データの受け入れに関しては,当初ブリッジングという概念が導入されていた。地域間で薬物動態,薬効,安全性に民族差があることはよく知られており,海外データをそのまま日本人に当てはめるには不適切な場合がありうる。ブリッジングとは,新しい試験としてブリッジング試験を行い,民族間の類似性,あるいは用量などの説明可能性を示し海外データを受け入れる,というものである。わが国では多くの薬剤がこの手法を用いて承認されてきたが,一方で後づけの手法としての限界があることも指摘されてきた。今回示されたICH-E17は,多くの国と地域でタイムラグなく新薬が使用可能になる,という同時開発が主眼であり,新しいコンセプトとしてpooled regionが示されている。これは「民族差が無視できる複数の集団をまとめて取り扱う」という概念である。東アジア地域は薬物動態・薬力学が似通っており,今後,わが国も含めた東アジアをpooled regionとした開発が増加するものと思われる。
【解説】
熊谷雄治 北里大学病院臨床試験センターセンター長