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誰をターゲットに公的団体への寄付をお願いするのか?[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.18

五十嵐 隆 (国立成育医療研究センター理事長)

登録日: 2018-01-01

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ある非営利財団の理事向けの自己啓発セミナーが昨年9月に香港で開催された。アジア・豪州地区から35名の地区理事が集まり、2日間のnonprofit board educationを受けた。非営利財団の理事としての心構え、理事会のあり方、理事会運営の仕方などについて、各国の理事が実情を披露しあい、楽しく学ぶことができた。理事会や理事のあり方についてじっくりと考え、討論し、学ぶ機会を得たことは、振り返ってみて、とても良い経験であった。

まず印象的だったことは、非営利財団にとって最も重要な原則は、あくまでも活動目的(使命)が第一であること、資金なくして活動は成立しないこと、そして、各界の指導的立場の人が財団のために無償で汗を流すことにつきる、と宣言していたことである。わが国では、ある立場につくと慣習的に財団の理事や評議員への就任を依頼される。しかしながら、私の場合、「清く正しく美しく」活動すれば良いだろうとの認識は持っていたが、このような原則をしっかりと覚悟して理事に就任したわけではなかった。

次に印象的だったことは、寄付をされる方のことである。非営利財団も資金なくして活動はできない。税法上の日米間の差が大きいので、寄付行為について日米を比較しても意味はないかもしれない。しかしながら、米国での寄付の実態を知ることは、わが国にも何らかの参考になる。米国では現在、非営利財団に寄せられる寄付の5%が企業、15%が財団、80%が個人、とのことである。個人からの寄付が寄付総額の大半を占めている実態を私は知らなかった。

米国では寄付を獲得するために、非営利財団の活動を個人に伝えるための様々な努力がされている。私の所属する成育医療研究センターでは、在宅医療を受けている重い病気を持つ子どもを短期間お預かりする「もみじの家」事業を一昨年前から始めた。現行の医療制度のもとで運営は赤字であるが、個人や企業からの寄付を戴いていることが運営上の支えとなっている。このような活動を少しでも多くの個人の方に伝え、賛同を得られることが、今後の寄付活動の勝敗の分かれ道になると確信した。

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