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(3)治せる小脳性失調症としての橋本脳症[特集:橋本脳症の診断と治療]

No.4888 (2017年12月30日発行) P.36

三苫 博 (東京医科大学医学教育推進センター兼任教授)

登録日: 2017-12-29

最終更新日: 2017-12-25

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  • 橋本脳症小脳型はステロイドに対して高い治療反応性を示す

    脊髄小脳変性症と鑑別することが必要となるが,症状に比して軽い小脳萎縮,抗NAE抗体陽性が診断の手がかりとなる

    1. 免疫性小脳失調症

    免疫的な機序により小脳失調をきたす一群を免疫性小脳失調症(immune-mediated cerebellar ataxias:IMCAs)という1)~3)。多発性硬化症(MS),傍腫瘍性小脳失調症(paraneoplastic cerebellar degenerations)などは以前から知られていたが,1980年代後半にグルテン失調症(gluten ataxia),抗GAD抗体関連小脳失調症(anti-GAD antibody-associated cerebellar ataxia),橋本脳症(Hashimoto’s encephalopathy)などが相次いで疾患概念として確立された。

    免疫性小脳失調症は,小脳が主な標的であるかどうかから,まず分類される(表1)。脳の複数の部位が標的であり,小脳はその一部である疾患には,MS,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)が含まれる。一方,免疫系の主な標的が小脳である疾患は,免疫応答のきっかけとなる病態が明確なものと,不明確なものにわけられる。傍腫瘍性小脳失調症やグルテン失調症は,腫瘍やグルテンがそれぞれ小脳に対する免疫応答を惹起する原因である。これに対し,抗GAD抗体関連小脳失調症や橋本脳症などは免疫応答を起こす明確な病態は同定されていない。注目すべきは,免疫的な機序で小脳症状を起こすことが明らかなものの,既存の疾患概念に属さない症例が存在することである。現在は便宜的にprimary autoimmune cerebellar ataxiaと一括されているが,将来的にはこの中から新たな疾患が同定されていくであろう。

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