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小論文[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.64

杉山 悟 (広島逓信病院病院長)

登録日: 2018-01-04

最終更新日: 2017-12-21

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この世の中で嫌なことは、と言えば、なんだろう。

歯が痛くて歯医者さんに行くこと、勉強していないのに試験期日が迫ってくることなどは、子どもや若い人にとっては嫌なことの代表格だろう。ならば私は、「手術と言われたらどうしよう」と思いつつ来られた患者さんを外来診察室で待たせたり、採用試験でドキドキしている受験者を廊下で待たせたり、思えば嫌なことばかりしているかもしれない。

私にとっても、試験は嫌なものにほかならない。数年前に業務上の必要に迫られて、脈管専門医の試験を受けた。人と争う試験と違い必要な点数を取れば合格する試験なので、勉強さえすればそれでいいのだが、50歳で受ける試験は物覚えが悪くなっているのでなかなか厳しい。試験前日に新幹線で東京に向かったが、普段長く感じる東京までの乗車時間に最後の知識を詰め込もうとして、もがき苦しみ、あっという間に着いた。もう、あれが人生最後の試験かもしれない。

最近は、採用試験などで小論文を読んだり面接を行ったりすることが多くなった。嫌な試験を受ける立場から、人に嫌なことをする側に回ってしまった。受験者が一生懸命書いてくれた小論文は、誠意を持って読まなければいけない、と思いながら毎回読ませてもらっているが、昨今は小論文の書き方もマニュアルがちゃんとあるようで、まとまった小論文が多いのが残念である。時にはハチャメチャな小論文はないものかと期待するが、まあ、一生に何度もない採用試験に突拍子もない面白い小論文を書いてくれる無鉄砲な人もなかろう。

ときどき「自分なら、どう書くだろうか」と自問自答してみる。試験官の度肝を抜くような小論文が書きたいものだ。「炉辺閑話」の投稿も「最近感じたことの自由作文」という小論文かもしれない。読者をひきつけるような体験談とか、過激な論調を振りかざせばウケるかもしれない。でも、やっぱり一番大事なのは、マニュアルにあるように、文章を「起承転結」でまとめることだろうか……などと考えつつ書くと、どうも「起承転結」の遵守だけに気を使って、小さくまとめた小論文に終わったようである。

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