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睡眠医療センターの診察室から想うこと[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.53

谷口充孝 (大阪回生病院睡眠医療センター部長)

登録日: 2018-01-04

最終更新日: 2017-12-21

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今年で睡眠医療センターを開設して20年を迎える。睡眠医学に関心を持ちはじめたときは、診療で欠かせない睡眠ポリグラフィはペン書きのアナログ脳波計で、検査技師もおらず、夜間に自分で検査を行わなくてはならなかった。昼間の勤務後で、つい眠りこんでしまうと一晩で200~300mにおよぶ紙記録が部屋中に散乱し、それを片づけるのに随分の時間を要した。そんな大変な検査であったためか、睡眠医学に関心を持つ医師は少数の愛好家に限られていた。

米国型の睡眠医療センターを開設した動機のひとつは、専門の睡眠技師を育成し、彼女、彼らに睡眠ポリグラフィを任せることである。これができれば医師は日中の診療に専念でき、そうなれば多くの医師が関心を持つに違いないと考えた。

時は過ぎ、夢は現実となった。現在では睡眠ポリグラフィは専門とする睡眠技師が行ってくれる。デジタルでパソコンベースなので、紙記録との格闘もなくなった。限られた好き者の集まりだった睡眠医学は、専門分野を問わず関心を持つ医師や医療機関が増えた。しかし、生来の天の邪鬼なのだろうか、ふと一抹の不安にかられる。夜間の睡眠検査を睡眠技師に任せ、検査結果だけをもとに診療することに慣れてしまったが、これで良かったのであろうか? と。

眠気との闘いではあったが、睡眠ポリグラフィは発見や驚きに満ちていた。つい先ほどまで話をしていた睡眠時無呼吸症候群の患者さんが、いつの間にか眠り、激しいいびきが聞こえ、無呼吸が生じる。あるいは、夢遊病行動の患者さんでは、穏やかな昼間の言動とは及びもつかない激しい口調の寝言と興奮が始まる。日中の診療では想像できない睡眠中の現象を目のあたりにすることから、医師は遠ざかってしまった。

誰も知らない睡眠中の現象に興味を持つことが睡眠医学の神髄であろうし、新しい知見を得るには、やはり睡眠中の現象にhere and nowで遭遇せねばならない。近頃は、それを何とか睡眠医学を志す若い医師に伝えなくてはならないと思ってならない。

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