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橋本脳症の鑑別診断と治療方針は?【鑑別は抗NAE抗体,治療はステロイドが有効】

No.4875 (2017年09月30日発行) P.61

形岡博史 (奈良県立医科大学神経内科講師)

登録日: 2017-09-27

最終更新日: 2017-09-26

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  • 橋本脳症の診断・治療,特に他の自己免疫性脳症との鑑別診断を。

    (青森県 M)


    【回答】

    橋本脳症は慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う自己免疫性脳症で,有病率10万人当たり2.1人です。臨床症状は記憶低下や精神・情動といった大脳辺縁系の症状や痙攣,小脳性運動失調など多彩です。中でも意識障害と痙攣,精神症状が急性に発症するものが多く,他の自己免疫性脳炎やヘルペス脳炎など辺縁系脳炎との鑑別を要します。

    甲状腺機能は低下から亢進まで様々ですが,大部分が正常であり,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(anti-thyroid peroxydase antibody:抗TPO抗体)や抗サイログロブリン抗体は全例にみられます。髄液は,高率に軽度の細胞増多や蛋白上昇がみられます。頭部MRI画像で異常を示すことは稀ですが,脳血流シンチグラフィー検査で機能的血流低下がみられます。他の自己免疫性脳炎にみられる腫瘍の合併はありません。

    橋本脳症の診断にきわめて有用なのは抗N末端α-エノラーゼ〔amino(NH2)-terminal of α-enolase〕抗体(抗NAE抗体)です。特異度は91%と高いものの,感度は50%程度で,陰性例でも橋本脳症の否定はできません。抗NAE抗体陽性橋本脳症80例の検討では20~30歳と60~70歳の二峰性の分布を示し,急性の意識障害や精神症状を呈し(58%),45%に髄液蛋白の上昇がみられ,頭部MRI画像異常は乏しくなっています(36%)。

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