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地域包括ケアへの誘導加速 7対1は9万床削減目指す【診療報酬改定・詳報】

No.4687 (2014年02月22日発行) P.82

登録日: 2014-02-22

最終更新日: 2017-09-14

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【概要】主治医機能の強化や急性期病床の大幅削減、在宅の実績評価など2025年の将来像に向けて誘導色の強い改定となった今改定。外来・入院・在宅の主な改定項目について解説する。

中医協の答申を受けて12日に会見した田村憲久厚労相は、今回の診療報酬改定について、医療・介護サービス提供体制の改革に充てる904億円の新たな基金と合わせ、「主治医機能を強化する中で、地域包括ケアという1つの大きな要を作ることに重きを置いた改定内容になった」と評価した。

厚労省の宇都宮啓保険局医療課長は「社会保障・税一体改革で示された2025年の将来像に向けて診療報酬でできることをまずやった」と説明。地域包括ケア体制の構築に向け、病床再編や主治医機能の強化といった医療提供体制の機能分化、在宅復帰を重視した医療と介護の連携を改定のポイントに挙げた。

外来医療の主な改定内容

●主治医機能の評価として地域包括診療料,地域包括診療加算を新設

外来分野では「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」を新設(別掲)。どちらも対象は高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4つの慢性疾患のうち2つ以上を持つ患者。一元的な服薬指導や健康管理など中小病院・診療所の持つ主治医機能を評価するもので、複数疾患を抱える患者の特性を踏まえ7剤投与の減算規定の対象からは除外される。算定要件として、介護保険への対応や在宅医療の提供、当該患者への24時間対応など地域包括ケアに対する十分な取り組みが求められている。

地域包括診療料は月1回算定できる外来の包括評価。1503点と高い点数設定だが、病院が算定するには原則院内処方が要件とされ、院外処方の場合でも24時間開局する薬局との連携が必要。診療所も常勤医師3人以上が算定要件となるなどハードルは高く、宇都宮課長は「それなりに覚悟してきちんとやっているところしか算定できない」との見方を示している。

一方、診療所のみが対象の地域包括診療加算は再診1回につき20点の出来高評価。常勤医師3人以上を満たさなくとも時間外対応加算1または2を届け出ているか在支診であれば算定できるなど、診療所が比較的算定しやすいものとなっている。同診療料と加算はいずれか一方に限り届出が可能とされている。

厚労省は、「75歳男性が30年来の糖尿病と脂質異常症で内科診療所を月2回受診、内服管理されている患者」のケースでは、これまでは調剤を除く1月当たりの合計点数が927点だったのに対し、地域包括診療料を算定した場合、1月当たり576点増になるとしている。

●外来点数の減算対象となる大病院の紹介・逆紹介率の基準を50%未満に引上げ

外来の機能分化に向け、大病院の紹介率・逆紹介率を高める取り組みも推進される。前回の2012年度診療報酬改定では紹介率40%未満、逆紹介率30%未満の特定機能病院と許可病床500床以上の地域医療支援病院に対し、紹介のない場合の初診料は200点、他の医療機関へ紹介したにも関わらず当該医療機関を受診した場合の外来診療料は52点に引き下げられたが、今改定では紹介率・逆紹介率ともに50%未満まで減算の対象が拡大されることになった。

入院医療の主な改定内容

●7対1、10対1一般病棟入院基本料算定病棟に対する特定除外制度を廃止
●一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直し
●短期滞在手術基本料の見直し:基本料3の対象を21種類に拡大した上で包括化

入院分野の最大のポイントは現在36万床に迫る勢いの「7対1一般病棟入院基本料」算定病床の大幅削減に向けた要件の厳格化だ。取り組みの柱となるのは7対1、10対1病棟に対する特定除外制度の廃止。90日を超えて入院する患者について、①療養病棟と同等の報酬体系とする、②出来高算定とするが平均在院日数の対象外とする─のいずれかを病棟単位で医療機関が選択することになる。現場の混乱が予想されるため16年度末までの経過措置が設けられており、さらに①を選択する病棟のうち1病棟については15年9月末まで2室4病床に限り出来高算定が可能で、平均在院日数の計算対象から除外することが認められる。厚労省は特定除外制度の廃止により、7対1病床で平均1.5日、10対1病床で3.2日、平均在院日数が延びると推定してい る。

一般病棟用の「重症度・看護必要度」は名称を「重症度、医療・看護必要度」に変更し、評価項目についてもより急性期患者の特性を適正に評価するため、血圧測定の削除や抗悪性腫瘍剤の内服の追加などの見直しが行われる。また短期間で退院可能な検査・手術で平均在院日数を“稼ぐ”ケースがあるとの指摘を踏まえ、「短期滞在手術基本料3」の対象を21種類に拡大するとともに、包括範囲を全点数とし、同基本料のみを算定した患者は平均在院日数の計算対象外とする。

今改定では入院医療の要件に在宅復帰率という基準が導入されたことも大きな特徴。7対1入院基本料では7割5分以上が要件とされた。厚労省はこれらの措置による7対1病床の削減効果を数値化していないが、財務省は16年度末までに36万床の約25%に当たる9万床程度の削減効果を見込んでいる。

●地域包括ケア病棟入院料/同管理料を新設

地域包括ケアを支援する病棟の評価として「地域包括ケア病棟入院料/管理料」が新設され、亜急性期入院医療管理料は廃止となる。急性期後の患者の受け入れ、急性増悪した在宅患者への対応、在宅復帰支援などの機能を評価するもので、在宅復帰率7割以上が要件とされた。一般病棟のみならず療養病棟からの移行も想定されており、日本慢性期病院協会は「会員が1病棟はこの点数を取れるように支援する」との方針を示している。

同入院料1と同管理料1はともに1日当たり2558点で、看護職員配置加算(150点)など新設された3つの加算を算定すれば1日当たり3000点を超える設定とした。

●地域包括ケアで複数の機能を担う有床診を対象に現行より高い入院基本料区分を新設
●12年度改定で包括化された有床診における栄養管理実施加算の復活

今改定で手厚い評価を受けるのが有床診。「カプセルホテルより安い」との批判もあった現行の「有床診療所入院基本料3」(351点)に該当する「同入院料6」で、31日以上の場合を450点(うち消費税率引上げ対応分7点)に引き上げられる。このほか12年度改定で11点が包括化された「栄養管理実施加算」が復活、以前の水準のまま12点が加算されることとなった。

在宅医療の主な改定内容

●機能強化型在支診・病の実績要件見直し、過去1年間の緊急往診10件、看取り4件に
●看取り等の実績ある機能強化型以外の在支診・病を評価する在宅療養実績加算を新設
●在総管、特医総管に同一建物の複数訪問時の点数を新設、約4分の1に評価引下げ

在宅分野は過去数回の改定で「言いようによってはジャブジャブつけてきた」(宇都宮課長)方針から変更し、今改定はメリハリの利いた内容となった。機能強化型在支診・在支病の実績要件が過去1年間の緊急往診10件、看取り4件に引き上げられる。

機能強化型以外でも緊急往診10件、看取り4件の実績のある在支診・在支病に対し、「在宅療養実績加算」を新設。緊急・夜間・深夜の往診は75点、ターミナルケアでは750点が加算される。
一方、厳しい減算規定が新設されたのは、中医協で不適切事例が問題視された在宅時医学総合管理料・特定施設入居時医学総合管理料における同一建物への複数訪問。同一建物以外の場合に比べ約4分の1となる点数が設定された。

向精神薬の多剤投与を是正へ

このほかの主な個別改定項目の要旨は上掲の通り。精神科医療では適切な向精神薬の使用を推進するため、精神科救急入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、精神療養病棟において種類数制限のない「非定型抗精神病薬加算2」(10点)を廃止、2種類以下の場合のみを評価する。「精神科継続外来支援・指導料」については1回の処方で3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬、4種類以上の抗精神病薬を投与した場合、算定不可とされ、処方せん料・処方料・薬剤料についても多剤投与した場合、減算となる。

医療従事者の負担軽減では、休日・時間外・深夜加算を見直し、1000点以上の手術・処置に対し現行の2倍の「加算1」を新設。医師事務作業補助者の配置についてもさらなる評価を行い、業務を行う場所の80%以上が病床・外来などを要件とする「医師事務作業補助体制加算1」が新設された。

厚労省は4月からの実施に向け、3月5日頃に関係告示・通知を行う。

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