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「認知症」と「大人の発達障害」[長尾和宏の町医者で行こう!!(77)]

No.4872 (2017年09月09日発行) P.18

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2017-09-11

最終更新日: 2017-09-06

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  • 55歳以上のもの忘れの12%がADHD

    8月27日に第1回認知症治療研究会関西支部会が開催された。全国から300名が参加し、会場は満席であった。興味深い講演が続くなか、名古屋フォレストクリニックの河野和彦先生による「認知症と大人の発達障害」という話は、おそらくこのテーマでは本邦初の講演であった。今回、その内容の一部と私見をご紹介したい。

    書店の医学書コーナーには、発達障害に関する一般書が多く並んでいる。日本国民の5%以上が発達障害だというデータもある。なかでも大人の発達障害が最近大きな注目を浴びている。コンサータとストラテラという治療薬が登場して以来、発達障害は医療の対象疾患となっている。後者は登録の必要がないので、筆者のような一般医も処方できる。発達障害のひとつである子供のADHD(注意欠陥多動性障害)は知能指数が高く才能に溢れるが、3割が大人に持ちこして大人のADHDとなる。不注意、多動性・衝動性を主症状とする。一方、アスペルガー症候群は、対人コミュニケーションの問題やこだわりが特徴である。そして大人のADHDの半数にアスペルガー症候群が合併している。

    大人の発達障害は歴史的著名人に多くいる。その作品群が世界遺産になっているアントニ・ガウディは三次元空間の把握が上手い一方、聴覚不全があり歌詞を覚えられなかったという。種の起源を提唱したチャールズ・ダーウィンも視覚には優れたが14歳になっても文字が読めなかった。このように天才と発達障害は同居している。また、フランクリン・ルーズベルトやウィンストン・チャーチルなどの世界的に著名な政治家も発達障害であったという。大人のADHDについては、1977年にヘンリー・マンとスタンレー・グリーンスパンが論文化したが、医学会は認めなかった。1990年にアラン・ザメトキンが運動前野と上前頭前皮質におけるブドウ糖の低代謝と成人の多動性を関連づける研究をN Engl J Medに報告している。いずれにせよ大人の発達障害が理解されたのは2000年以降のことだ。直近では55歳以上のもの忘れの12%がADHDであるという高知大からの報告がある(上村直人,他:ADHD in Old Age.老年精神医学雑誌28[増刊-2].176.2017)。認知症と大人の発達障害を鑑別する必要性が高まっている。

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